またしても株価がものすごい下落を見せています。これは一時的な調整なのか、
それともリーマンショックのような悲惨な末路が…
などと考えるのはやめにしておきましょう!
さて、株といえば「有価証券」ですよね。
で、有価証券といえば「簿記」であると僕は信じています。
と、いうわけで今回は「有価証券」の基本について見ていきたいと思います。
有価証券についてはどのレベルの簿記の試験でも出題されるでしょうが、
売買目的とか満期保有目的とかいろいろあって、はじめのうちは混乱しました。
「なんでいちいち分けてんの?」とか「評価基準が違うのは何でだよ?」とか思ったりもしました。
そのあたりについて、以下で確認していくことにします。
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保有目的ごとの区分
有価証券には「株式」や「債券」など様々なものが存在しますが、簿記ではそのような種類別の区分は行いません。
その代わり、その有価証券の「保有目的」ごとに区分していくことになります。
この保有目的に応じてその会計処理が変化してくるんですね。
で、その区分が以下の4種類になります。
- 売買目的有価証券(有価証券)
- 満期保有目的の債券(投資有価証券)
- 子会社、関連会社株式(関係会社株式)
- その他有価証券(投資有価証券)
有価証券を購入したら、まず何のために買ったのかを見て、それが上記のうちどれに当てはまるのかを考えることになります。
簿記の問題でよくあるのが、問題文に「すべて”有価証券”として処理している」みたいなことが書いてあって、
そのなかに満期保有目的の債券みたいな「投資有価証券」になるものが混じっており、ちゃんと分けてから解答しなくちゃならない、
とかそういう奴です。
ここで区分がはっきりできていないと、この後の処理がそれ次第で大幅に変わってくるため、正解にはたどり着きません。
では、それぞれの区分でどういった処理をするのか、確認していきます。
各種有価証券の処理
保有目的ごと区分した有価証券は、その区分に従った処理をしていきます。
例えば時価で評価したりしなかったり、評価差額の取り扱いが異なったりします。
では、以下でそれぞれの区分ごとの処理について見ていきましょう。
売買目的有価証券
売買目的有価証券に区分されるのは、
「時価が変動することによって利益を得ることを目的とした有価証券」
になります。おそらく簿記の試験では、有価証券一覧のところに「売買目的で取得した」とか書いて支持してくるんじゃないかと思います。
で、この売買目的有価証券は期末の時価で評価することになります。
その理由は「時価の変動で利益を得ようとして持ってるなら投資する側にとって”有用な情報”は期末時点での時価だから」という単純なものです。
そしてもちろん「売買目的」で取得した有価証券について、
それをどっかに売却してしまうことに「事業遂行上の制約」は伴いません。
しかもこういったものは「いつでも売却可能な市場」があるため、
時価が変動した瞬間にその含み益分は実現したも同然!ということになります。
それらの様々な理由から、売買目的有価証券の評価差額は「当期の損益」として扱うことになっています。
なので保有している売買目的有価証券に含み損益が生じた場合は「有価証券運用損益」で処理することになります。
また、売却によって利益や損失が生じた場合には「有価証券売却損益」とします。
で、期末まで売却せず残っていたものについては「有価証券」で表示します。
これは運用損益を差し引きした後の金額ですね。
なお、運用損益について「切放法」と「洗替法」のどちらで処理をすべきかについては、
問題文とかに指示があると思いますので確認しておく必要があります。
表示科目:有価証券(流動資産)
期末評価:時価
評価差額:当期の損益として「有価証券運用損益」で処理
満期保有目的の債券
続いて「満期保有目的の債券」です。表示科目は「投資有価証券」、
こいつの恐ろしいところは「債権」じゃなくて「債券」であることです。
地味すぎて気がつかないゆえ、油断してると普通に間違えるかと…
で、この満期保有目的の債券に分類される有価証券は、
「満期まで保有する意図を持って買った債券」となります。そのままですね!
この債券、もちろん市場があって、時価が存在するものもあるはずです。
しかしながら「満期まで保有して元本と利息を受け取る」ことが目的だあるため、
償還前にそういった市場で売却してしまうことは考えられません。
ゆえに満期保有目的の債券における価格の変動はたいした情報じゃないんですね。
と、いうことでこれらについては「取得価額」により評価することになります。
でも債券って聞くと「割引発行」や「打歩発行」など、
その額面金額よりも低いまたは高い金額で購入することが考えられますよね?
このとき、その額面金額との差額部分が「金利の調整」と認められる場合には、
「償却原価法」によって算定された償却原価を貸借対照表価額にすることになります。
では、その償却原価法についても確認していきましょう。
償却原価法
償却原価法は債券の額面金額と取得価額の差額(金利の調整部分)を、償還の期日まで徐々に埋めていく方法です。
これには原則法である「利息法」と簡便法の「定額法」があります。
それぞれのやり方で毎期の償却額が変わってくるので注意する必要があります。
利息法
利息法によって償却原価を算定する場合には、2種類の利子率を用いることになります。
ひとつは「実効利子率」こちらは差額部分とその債券に付されている利息を併せたコミコミの利子率になります。
実効利子率はそのときの債券の帳簿価額に掛けて使います。
もうひとつは「クーポン利子率」債券に付されている金利単体のことです。
こちらは債券の額面金額に掛けて使います。
では実際に設例で確認していきます。
当期首において、満期保有目的の債券を発行と同時に取得した。
この債券の償還期限は5年、利払日は9月および3月の末日である。
※会計期間:4月1日~3月31日
・債券データ
額面10,000円
取得価額8,500円
実効利子率4.7%※注意:実効利子率は「適当」です
クーポン利子率1%
※小数点以下は四捨五入する。
解答の方法として、
まず実効利子率の4.7%を、購入価額(=帳簿価額)に掛けます。
次にクーポン利子率を額面金額に掛けます、
実効利子率にはクーポン利子率の分も含まれているため、
差引して余った分が償却額になり、投資有価証券に算入されます。
なお、この設例の場合、「半期ごとの利払」であることに注意しなくてはなりません。
利息法の場合は、半期で利払があると次の半期で実効利子率を掛ける帳簿価額が変化します。
実効利子:8,500円×4.7%=399.5円
⇒199.5円/2=199.75円 ∴四捨五入200円
クーポン利子:10,000円×1%=100円
⇒100円/2=50円
・9月30日の仕訳
現 金 預 金 50円 / 有価証券利息 200円
投資有価証券 150円 /
債券(投資有価証券)の帳簿価額8,650円
※3月は8,650円に対して実効利子率を掛けていくことになる。
・3月31日
実効利子:8,650円×4.7%=406.55円
⇒406.55円/2=203.275円 ∴四捨五入203円
クーポン利子:10,000円×1%=100円
⇒100円/2=50円
・3月31日の仕訳
現 金 預 金 50円 / 有価証券利息 206円
投資有価証券 156円 /
債券(投資有価証券)の帳簿価額8,806円
注意:この設問の実効利子率は「適当」です
利息法では利払日ごとに債券の帳簿価額が上がっていくんですね。
簿記の試験で出題される満期保有目的の債券は、利払が半期ごとであることが多いように感じます。
途中の処理で「投資有価証券」を足し忘れると、それ以降の計算が合わなくなってしまうので注意する必要がありますね。
定額法
続いて簡便法として認められている「定額法」です。
他の要素によって複雑化している問題では償却原価法はこっちで解答するようになっているものが多いんじゃないでしょうか?
定額法で用いる利子率は、「クーポン利子率」のみになります。
金利の調整部分は?というと「毎期均等に償却していく」方法をとります。
先程と似たような設例で確認してみましょう。
当期首において、満期保有目的の債券を発行と同時に取得した。
この債券の償還期限は5年、利払日は9月および3月の末日である。
※会計期間:4月1日~3月31日
・債券データ
額面10,000円
取得価額8,500円
クーポン利子率1%
※小数点以下は四捨五入する。
まず着目すべきは債券の額面と取得価額に1,500円の差がある
ということです。これを償還期限である5年後まで、均等に配分していくことになります。
で、この債券は利払が半年ごとになっているんですが、
償却額の計算は決算でまとめて行うことに注意しなくてはなりません。
クーポン利息:10,000円×1%=100円
⇒100円/2=50円
・9月30日の仕訳
現 金 預 金 50 / 有価証券利息 50円・3月31日(決算日)
クーポン利息:10,000円×1%=100円
⇒100円/2=50円
償却額(10,000円-8,500円)/5年=300円
・3月31日の仕訳
現 金 預 金 50 / 有価証券利息 50(利息の処理)
投資有価証券 300 / 有価証券利息 300(償却額)
決算日における債券の帳簿価額8,800円
こっちは利息方と比べてずいぶんすっきりしていますね。
ただ、半期のタイミングで利払があった場合に、そこで「有価証券利息」の計上を忘れていると大変です。
また、「クーポン利息については適切に処理されている」みたいな問題だった場合、
今度は計上しすぎになってしまわないように注意しておかないとなりません。
償却原価法は「外貨建有価証券」のときにもやらなければならないことが多く、
せっかく難解な為替の計算をクリアしたところで、償却額が間違っていたらしょうもない失点をしてしまいます。ここは単に覚えるだけでなく、問題をちゃんと読んで、状況を理解してから解答する必要がありそうですね…
子会社・関連会社株式
続いて子会社や関連会社の株式を保有している場合の処理です。
こいつらは「関係会社株式」として表示することになるんですが、
一体どういうものが子会社や関連会社となるの?というところです。
この定義としては、
- 関連会社:発行済株式の20%超50%以下を保有
- 子会社:発行済株式の50%超を保有
ってことになっています。要するに「経営に口出しできる」レベルの株を押さえていると関連会社だし、過半数持っていればそいつはもう子会社だよってことなんですね。
で、これらの株式、経営に対しての発言力をもてるのは上記のような割合で株を持っているからであって、
売ってしまったらその発言力はなくなります。株主総会で叫んでもムダです。
なので関係会社株式を売却してしまうことはありませんよね。
ゆえにこちらも価格変動に特に意味はなく、「取得価額」で評価することになります。
関係会社株式はどちらかというと事業投資の意味合いが大きく、
時価の変動によって利益を得るものではないことから、このような処理となったようです。
それと、関係会社株式になるものには、
「期首の段階では別の区分だったけど、当期中にたくさん取得した」
みたいな有価証券が入ってくることもあるようです。
問題文を読んで、期中にえらくたくさん取得していたら「関係会社株式」にならないか、確認しておいた方がいいかもしれません。ただ、そうなった場合は問題のどこかにその旨が記載されているかもしれませんが…
その他有価証券
その他有価証券は、上記3区分のうちのどれにも属さない有価証券です。
貸借対照表での表示は「投資有価証券」となります。
なお、その他有価証券にも「償却原価法」をやらないといけないものも存在します。
ダルいですね…
ところで「その他」で「どれにも属さない」となるとどういったものが該当するんでしょうか?
それは主に「他社と持ち合いしている株式」とか「長期投資」の有価証券になります。
あと、ここまで区分しておいて後は「その他」になるのはなんで?もっと分類できるでしょ?
とも思ったんですが、これについては「金融商品に関する会計基準」で、
~その多様な正確に鑑み保有目的を識別・細分化する客観的な基準を設けることが困難であるとともに、保有目的等自体も多義的であり、かつ、変遷していく面がある~(略)
注:中央経済社編(2012)会計法規集 211頁参照
というような記載があり、結局売買目的と関係会社株式の中間的な感じでしょ?
ってことになったようです。めんどくさかったんでしょうね…
さて、この「その他有価証券」、期末には「時価」で評価することになっています。
しかしながら持合株とかの場合、普通に売ってしまうわけにもいかず、
その処分には「事業遂行上の制約」が伴ってくることになります。
そうすると売買目的有価証券でやったように市場価値の変動分をそのまま当期の損益にしてしまう、というわけにはいきません。
じゃあどうするか?純資産に直入しましょうっ!てことになりました。
で、このときの方法には「全部純資産直入法」と「部分純資産直入法」の2つがあります。
期末の評価はこのどちらかを選択して、洗替法で処理することになります。
それぞれ確認していきましょう。
全部純資産直入法
まずは評価差額の全部をそのまま純資産の変動に反映させる「全部純資産直入法」です。
この場合、含み益がある場合でも含み損がある場合でも関係なく、当期の時価の変動額を純資産に直入してしまうことになります。
このとき、変動額には「その他有価証券評価差額金」を用います。
損益計算を行わないことで、当期の損益に対する影響をカットし、変動額についてはしっかり貸借対照表に反映させる作戦ですね。
では、また設例で確認していきます。
・A株:取得価額1,000円 当期末時価1,500円
・B株:取得価額1,000円 当期末時価 700円
A株の方は取得価額に対して期末の時価の方が500円高くなっています。
一方B株は300円の含み損を抱えています。
この場合の処理は、
・A株
投資有価証券 500 / その他有価証券評価差額金 500
・B株
その他有価証券評価差額金 300 / 投資有価証券 300
貸借対照表
・投資有価証券:2,200円
・その他有価証券評価差額金:200円
というようになります。
この設例だと単純明快ですが、実際の試験ではほぼ間違いなく「税効果会計」が絡んでくるはずなので、ここまで簡単ではありません。
なお、税効果会計の確認はややこしくなるのでまた今度にします…
部分純資産直入法
こちらは含み益なら純資産に直入、含み損なら当期の損失として処理するタイプです。
なぜ含み損がでた場合のみ損益として扱うんでしょうか?
その理由は「保守主義」にあります。この観点からは、将来予測される危険に備えた慎重な判断に基づく会計処理をすることになっています。
そのため評価がマイナスになっている場合に限り当期の損失としてもいいよってことになっています。
で、こちらもさっきの設例で確認していきます。
・A株:取得価額1,000円 当期末時価1,500円
・B株:取得価額1,000円 当期末時価 700円
さっきとまったく一緒の例です。Bの方が含み損ですので、そちらだけ評価差額を当期の損失として処理していくことになります。
・A株
投資有価証券 500 / その他有価証券評価差額金 500
・B株
投資有価証券評価損益 300 / 投資有価証券 300
損益計算書
・投資有価証券評価損益(借)300円
貸借対照表
・投資有価証券:2,200円
・その他有価証券評価差額金:500円
含み益の場合は全部純資産直入法と変わりませんが、含み損があった場合には損益計算書を経由してくることになります。
また、こちらも税効果会計の対象になり、「損」の場合には「法人税等調整額」で金額を合わせていくことになります。
時価を把握することが困難な場合の処理
時価で評価することになっているその他有価証券ですが、
そのなかには「時価を把握できない」とか「時価なんてない」ものも存在するはずです。
では、そういったものの期末における価額は何を用いたらいいんでしょうか?
これはその有価証券が何なのかによって2種類の方法に分かれてきます。
まず、「社債・その他の債券」については償却原価法を用いて評価します。
それ以外のものについては単純に取得原価で評価していくことになります。
これだけなら簡単そうなんですが、どうせ実際の試験では他の厄介な要素が絡んできてややこしくなるはずです。
「時価の把握が極めて困難~」ときてもあまり期待しないほうがいいかもしれません。
その他有価証券は評価の方法が特殊であることの他に、税効果とか包括利益とかいろんなところに絡んでくる可能性を秘めています。
これはわりと大変な論点かもしれませんね…
有価証券の認識
話は変わりますが、今度は有価証券の認識タイミングについてです。
株の売買をしたことがある場合とか、このブログでも扱っているFPの試験を受けた方はご存知かと思いますが、
株の受け渡しは約定日の4営業日後、となっています。
他にも約定日と受け渡し日がずれてくるものはたくさんあるんあじゃないでしょうか?
じゃあどっちの日付で有価証券を帳簿に載せたらいいの?ってなりますよね。
これが期中の出来事ならあんまり問題にはならないでしょうが、
約定と受け渡しの間に決算日が挟まってしまっていたら普通に困りますし、
簿記の試験問題で困らせようと思ったらそのようにしてくるんじゃないでしょうか?
で、結局認識のタイミングは「約定日」を基準とすることになっています。
これは有価証券を売却した場合も同様で、「約定日」にその消滅を認識することになります。
なぜ約定日なのか?まだ株券も貰ってないのに…
でもその有価証券の価格変動リスクとか何か他のいろいろなものは、
約定したタイミングで買い手側に移ることになります。
なので実際の受け渡しがまだでも株の権利やリスクを持っている買い手側はその有価証券の発生を認識し、すでにその権利を放棄し、リスクからも開放された売り手側はその消滅を認識することになります。
なので3月31日(決算日)に約定した有価証券は、その日のうちに仕訳して、貸借対照表にも載ってきて、というかたちになります。逆に4月3日(受け渡し日)について問われていたらまだ「未払金」になっていた支払の処理をするか、もう払ってあったとかなら仕訳なしと解答することになります。
有価証券も減損する?
この間まで必死になって「有形固定資産の減損」をまとめていました。
有形固定資産の現存については以下の記事から↓
簿記試験対策「固定資産」~有形固定資産の減損会計①~
簿記試験対策「固定資産」~減損会計② 資産のグルーピング~
簿記試験対策「固定資産」~減損会計③ 共用資産の減損損失~
でも減損するのは固定資産だけではありません。
有価証券(売買目的有価証券を除く)でも「あまりに値が下がった場合」を対象としてそのような処理をすることがあります。このときの評価差額は当期の損失として「投資有価証券評価損」か「関係会社株式評価損」として処理することになります。
で、そのやり方として「強制評価減」と「実価法」の2種類があります。
「強制評価減」は時価のある(把握できる)有価証券に対応し、「実価法」は時価が把握できないものに対応します。
では、これも別々に確認して行きましょう。
強制評価減
これは保有している有価証券の時価が「著しく下落」している場合に、
回復の見込みがあると認められる場合を除いて、評価差額を当期の損失とする方法です。
「著しく下落」って曖昧な表現がされていますが、
およそ時価の50%の含み損を抱えたら減損の処理をすることになるようです。
では、ちょっと設例で確認しておきましょう。
A社株:取得価額1,000円 前期末時価1,100円 当期末時価300円
前期末までは順調な感じでしたが、当期末になっていきなり時価が暴落しています。
で、このときの処理が↓
・投資有価証券評価損益 700 / 投資有価証券 700
損益計算書
・投資有価証券評価損700円
貸借対照表
・投資有価証券300円
ということになります。前期末の段階では100円の評価益が出ていますが、
洗替法であるため当期首には1,000円に戻っています。
そっから700円の下落で強制評価減をしたため、残りの投資有価証券は300円(期末時価と同じ)になります。
なお、この場合にはその他有価証券であっても純資産に直入することはせず、当期の損益となります。
あと、この評価減は来期になっても戻ってきません、そのままです。
実価法
こっちは市場価格がない株式等について減損処理する際に用いることになります。
市場価格がないのにどうやって損失の金額を判断するのかについてですが、
これは保有している株を発行している会社の財政状態をもとに判断します。
市場価格がなくても、会社の株の発行総数における自社で保有している分の割合と、
その会社の貸借対照表を見れば、株の「実質価額」を算定することが可能ですよね。
その「実質価額」を求めるための算式は、
(当該株式発行会社の資産-負債)/発行済株式総数×当社保有株式数
ということになります。
よくわかんないので設例で確認します。
B社は度重なる不祥事により財政状態が著しく悪化している。
B社の発行済株式総数は100株である。
・B社株式:取得価額300円(関係会社株式)
・B社貸借対照表
資産合計1,000円
負債合計 900円
資 本 金 100円
現在保有しているB社の株式は30株、取得価額が300円なので1株10円で購入したことになりますね。
一方B社の貸借対照表を見ると100株発行に対して「資産-負債」の金額は100円しかありません…
つまり1株1円の価値しかないってことですよね。
では、この場合の解答を確認してみます。
・(資産1,000円-負債900円)/株式数100株×自社保有30株=30円
B社株式の帳簿価額
・300円
関係会社株式評価損益
・300円-30円=270円
減損後のB社株式の帳簿価額
・30円(関係会社株式)
ということになります。
たとえ時価がわからなかったとしても、発行会社の純資産をみてみればOkということですよね。
ちなみに、簿記の試験では上記の例のように「貸借対照表」として財政状態が判別できる資料があるはずですので、
それに従って解答していけば普通に大丈夫かと思います。
※外貨建投資有価証券の減損処理については以下の記事の「5」↓
簿記試験対策「外貨建会計」~外貨建有価証券の処理~
配当金を貰ったら
株式を保有している場合、毎年1回とか2回、配当金が支払われることが多いかと思います。
これ、普通に貰う分にはありがたい限りなんですが、
簿記の試験で配当金を受け取った場合には、そのお金の出所に注意する必要があります。
ただし、「売買目的有価証券」については特に気にすることなく、「受取配当金」で処理することになります。配当の原資によって処理が変わってくるのはそれ以外の有価証券になります。
では、何がどうなると処理が変わってくるのでしょうか?
まず、簿記の試験で会社が配当を出すときの原資として考えられるのは、
「繰越利益剰余金」と「その他資本剰余金」の2箇所になります。
売買目的以外の有価証券で配当金を受け取った場合には、このうちどちらから配当金が支払われたのかによって処理を帰る必要があります。
では、それぞれ確認していきます。
繰越利益剰余金からの配当
まず、こちらの「繰越利益剰余金」は利益性の剰余金になります。
つまり儲かった分を株主に対して配当してるってことなんですね。
これが普通に考える「配当金」だと思います。
ゆえに、このときの仕訳は
ということになります。普通ですね。
その他資本剰余金からの配当
こちらは「その他”資本”剰余金」とあるように、資本制の剰余金になります。
これは利益性の剰余金と違い、株主から預かったお金であるわけです。
と、いうことはその他資本剰余金から配当を出した場合には、
「株主から預かったお金を、そのまま株主に返しているだけ」ということになります。
儲け分を配るなら「配当金」と自信を持って言えますが、
ただ帰ってきただけのものをそう呼ぶのはちょっと…って感じですよね。
しかも株主に返した分は株式の価値と交換したようなもんですから。
当然株を保有している側から見ればその金額分の株について返金を受けたということになります。
そこで、その他資本剰余金から配当を受けた場合には当該配当金の金額分だけ、
「投資有価証券を減額」することになっています。
これを仕訳にすると↓
さっきは「受取配当金」だった部分が「投資有価証券」の減額に変わっています。
これで配当金らしからぬ何かについてうまく説明のつく処理ができました。
なお、売買目的で持っていた場合には、その会社のどうこうは関係ありませんから、
ふつうに「受取配当金」で処理することになっています。
まとめ
有価証券の基礎的な部分はこれで大体かと思います。
まだ「保有目的区分の変更」が残っているようですが、ダラダラ書いていたら謎の超大作になってしまったため、次に機会があったときのためにとっておきます。
※有価証券の保有目的区分の変更については以下の記事から↓
簿記試験対策 有価証券の保有目的を変更したときの処理
(日商簿記2級では範囲外のようです…)
この他、有価証券の項目では「外貨建て」というとても消えて欲しい論点が存在します。
ただ、今回のような基本的な部分がおろそかになると、いくら応用的な問題を勉強しても何の役にも立たないかと思いますので、
とりあえず有価証券については、しばらく基本問題を解いていく感じで対策を進めていきます。