簿記試験対策 有価証券の保有目的を変更したときの処理

有価証券の簿記上の処理については、以前無駄に長い記事でその基本的な部分について確認しましたが、「売買目的有価証券」や「その他有価証券(投資有価証券に該当)」などといった保有目的は、有価証券を保有している企業の事業遂行上の都合などによって変化してくる可能性があります。

※有価証券の基本的な処理については以下の記事から↓
簿記試験対策「有価証券」~保有目的による種類分けと会計処理~

もちろん、特に理由もなく単純に「保有目的を変更したい」ということでの変更については認められていません。そんなことをしてしまうと利益操作に使う企業が続出するでしょうから…しかし簿記、というか企業会計では「正当な理由」をもって有価証券の保有目的区分を変更する場合にはこれを認めています。

たとえば、「その他有価証券として保有していた株式を追加で取得した結果、その企業の発行済株式の50%超を保有することになった」という場合には、当該株式については「関係会社株式」に変化することとなります。

では、そのような場合には一体どのような処理をすべきなんでしょうか?今回は、簿記の試験対策上覚えておくべき「有価証券の保有目的の変更」と、その場合の処理について確認しました。それを各有価証券の「変更前」の区分ごとに見ていきたいと思います。

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売買目的有価証券からの変更

売買目的で保有していた有価証券の保有目的を変更する場合、変更先の候補となってくるのは「その他有価証券」「関係会社株式」の2つになります。満期保有目的の債券が抜けていますが、基本的に取得時に「満期まで保有して利息と元本を回収する」と考えていたもの以外は満期保有目的にはできないとのことでした。

で、売買目的有価証券からの変更については上記の2種類、どちらに変更する場合も処理は同じになってきます。

まず、変更する際の価額は「そのときの時価」を使用することになります。そしてそのときの時価と帳簿価額との差額部分については「有価証券評価損益」を用いることになります。では、実際に仕訳の形を確認しておきましょう。

設例

当社はA社株式を売買目的で保有していたが、正当な理由をもってこれをその他有価証券に変更した。

A社株式
帳簿価額:10,000円
時  価:12,000円

仕訳

投資有価証券   12,000 有価証券     10,000
有価証券評価損益 2,000

この例ではその他有価証券に変更していますが、子会社株式や関連会社株式に変更した場合でも動揺に処理することになります(投資有価証券を関係会社株式に)。

で、この段階においてすでに保有目的区分の変更は完了しているため、決算時には「変更後」の保有目的区分にしたがって処理していくことになります。

その他有価証券からの変更

次に、「その他有価証券」として保有していたものの区分を別のものに変更する場合です。保有目的区分の変更として簿記の試験に出題される可能性があるもので最も厄介なのはここだと思います。なぜならばその他有価証券からの変更では、「変更先の保有目的区分」や変更前に全部純資産直入法で処理していたのか、それとも部分純資産直入法で処理していたのかなどの要素で会計処理が異なってくるためです。

では、それぞれの処理のパターンについて確認して行きましょう。

その他有価証券から売買目的有価証券

「その他有価証券」として保有していたものを「売買目的有価証券」に変更する場合には、変更後の帳簿価額を「そのときの時価」とし、変更前の帳簿価額とそのときの時価との差額については「投資有価証券評価損益」として処理していくことになります。

この処理は「売買⇒その他」の場合の処理をちょうど逆にしたものと考えればOKかと思います。では、こちらも設例で確認していこうと思います。

設例

当社はA社株式をその他有価証券として保有していたが、正当な理由をもってこれを売買目的有価証券に変更した。

A社株式
帳簿価額:10,000円
時  価:12,000円

仕訳

有価証券      12,000 投資有価証券     10,000
投資有価証券評価損益 2,000

これについては特に問題は無いかと思います。とりあえず、「その他⇔売買目的」間の変更については「時価評価して差額を評価損益とする」と覚えておけば大丈夫でしょう。

その他有価証券から関係会社株式(全部純資産直入法)

続いてその他有価証券から関係会社株式へ保有目的を変更した場合です。このパターンでは「その他」として保有していた時の会計処理によって、変更字の処理が異なってきます。まずは「全部純資産直入法」によって処理していた場合についてです。

このパターンでは、「変更時の帳簿価額」をもってそのまま振り替えるだけになります。そうすると評価差額的なものについては生じないため、比較的覚え易い処理となっていますね。

その他有価証券から関係会社株式への変更(全部純資産直入法の場合)

仕訳

関係会社株式  ○○ 投資有価証券 ○○

※変更時の帳簿価額でそのまま振り替える

こちらは簡単ですね。しかし問題は次の「部分純資産直入法で処理していた場合」になります。

その他有価証券から関係会社株式(部分純資産直入法)

部分純資産直入法で処理していたその他有価証券から関係会社株式へ保有目的を変更する際には、その有価証券について前期末に含み益が生じていた場合と含み損が生じていた場合で取り扱いが異なります。これらについてそれぞれ確認していきましょう。

前期末「含み益」の場合

その他有価証券(部分純資産直入法)として保有していたものについて前期末に含み益が出ていた場合ですが、この場合には全部純資産直入法で処理していた場合となんら変わりはありません。

したがって変更時の処理は「全部純資産直入法で処理していた場合のものと全く同じ」ということになってきます。

前期末「含み損」の場合

では、前期末において「含み損」の状態となっていた場合にはどのような処理になるのでしょうか?

この場合には、洗替法の処理によって前期末の評価損に当たる金額が「投資有価証券評価損益」として貸方に計上されていることになります。そうなると、実際には前期の含み損を期首で修正しただけの処理が、あたかも評価差益が生じているような見た目になってしまいます。

そこで、この意味不明な評価差益を打ち消すために「変更の際に前期末の時価をもって関係会社株式とする」処理を行います。

実際の簿記の試験でこんなところがピンポイントで出題される可能性は低いでしょうが、一応覚えておいた方が無難かもしれません…

満期保有目的の債券からの変更

最後に満期保有目的の債券からそれ以外の保有目的区分に変更する場合です。とはいえ、有価証券を取得する際に「満期まで保有する」という意思を持ってこの区分で処理しているわけですから、ここから別の保有目的に変更することは考えにくいです。

しかし、事業遂行上で何かあった場合など、どうしても保有目的を変更しなくてはならないときには「そのときの償却原価」をもって帳簿価額とすることになるようです。

これについても簿記の試験ではあまり出題されることは無いんじゃないでしょうか?

まとめ

いぜんの記事で有価証券の基本的な処理について確認しましたが、そこで見送っていた「保有目的区分の変更」についての記事となりました。これについては日商簿記2級まででは範囲外となっているようなので、余り需要は無んじゃないかと思いますが、自分の試験対策のために再確認した次第です。

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