この間、最近試験範囲が大幅に変更されたという「日商簿記2級」について確認しました。
で、その範囲のなかに「電子記録債権」という見慣れない科目が追加されていたんですね・・・
※日商簿記2級の出題範囲については以下の記事から↓
日商簿記 出題範囲改正で難化した?合格率は?
この「電子記録債権」以前は1級の範囲として取り扱われていたということで、そこまで受験していない僕は知る由もなく、「なにこれ?」って感じでした。でも2級の範囲に追加したということは、商工会議所さんが「重要」と判断したということ、今後、税理士試験の簿記論でもさりげなく出てくるような気がします。
そこで、今回はこの「電子記録債権(債務)」について確認していこうと思います。
Contents
電子記録債権とは?
まず、「電子記録債権」ってなんなんでしょうか?ということでちょっと調べてみた結果、平成21年4月9日の企業会計基準委員会の資料が出てきました。そこには以下のような記載がありました。
電子記録債権とは、その発生又は譲渡について、電子記録(磁気ディスク等をもって電子債権記録機関が作成する記録原簿への記録事項の記録)を要件とする金銭債権であり、その取引の安全を確保し事業者の資金調達の円滑化等を図
る観点から、従来の指名債権や手形債権とは異なる新しい債権の類型として制度化されたものである。
注:企業会計基準委員会(2009)「電子記録債権に係る会計処理および表示についての実務上
の取扱い」より抜粋
ちょっと何を言ってるんだか・・・って感じですね。これについて商工会議所のHPではもうちょっとソフトな言葉で表現されていました。
電子記録債権は、インターネットなどを用いた新しいタイプの債権で、支払う側は電子記録債務を負います。
これならちょっとわかりやすい、ここでは電子記録債権のメリットとして、「印紙税の負担回避」、「盗難や紛失の心配がない」、「容易に分割可能」などといったことが挙げられていました。近年インターネットの急速な普及により、「なんでもネット上で完結するようになった」ということを考えれば、こういったものの重要性は爆上げしているといっていいでしょう。それゆえ2級の範囲でやっておいて欲しい、ということになったんですね。
電子記録債権の処理
続いて、電子記録債権が実際の簿記の試験で出題された場合に、どういった処理をすべきかについて確認しておきます。
と、いっても上で貼ってある商工会議所のリンクのページに全部載っていたので、ここでは軽く確認するに留めます。カンペキにしたい方はさっきのリンクを再掲しておきますのでそこから見ておいてください。
さて、この電子記録債権(債務)は、「電子債権記録機関」というところで発生するようです。問題文でこのワードが出てきたら関係してきそうですね。で、使い方としてはどうやら売掛金や買掛金の決済として用いられるようです。仕訳を見てみましょう。
・仕訳
買掛金 100 / 電子記録債務 100
上記電子記録債務の支払期限が到来し、預金から引き落とされた
・仕訳
電子記録債務 100 / 現金預金 100
発生時の「受取側」の処理
・仕訳
電子記録債権 100 / 売掛金 100
決済時の「受取側」の処理
・仕訳
現金預金 100 / 電子記録債権 100
処理としては割りと単純なようです。さらにこの電子記録債権は、受取手形のように割引をすることができるとのことです。そのときの科目は「電子記録債権売却損」を用いることになります。
つまり「手形」みたいなもの?
で、ここまで確認してみてわかったことは”完全に手形みたいなもん”ってことです。「電子記録」とか難しそうな単語で表現されていますが、中身はそんなに難しいものじゃない感じですし、普通に手形と同じもので、ネットでやってるだけなんだな~ぐらいの認識でいいんじゃないでしょうか。
唯一手形と違ってくるのは、「電子記録債権のメリット」としてあった、分割が容易であることを利用した問題が出題される可能性があることでしょうか?たとえば10,000万円分の電子記録債権を持っていて、5,000円分割引、3,000円分裏書譲渡、残りは決済した、とかそういった感じの問題でしょう。
もし、このようにバラバラにしたものが「不渡」となってしまった場合には結構厄介な問題になる気がしなくもないですが、それ自体がA社に対する・・・B社に対する・・・みたいにいくつもあるわけでなければ何とかなるように思えます。
まとめ
今後、普通の手形はどんどん使われなくなっていき、全部電子記録債権/債務、またはそれと似たような新しいものに置き換わる日が来ることは間違いないく、中小、零細においてもそれを利用するのが当たり前になってくることでしょう。
簿記の試験においても、「手形の処理」が完全に削除され、「電子記録債権・債務の処理」とかに置き換わるときが来るかもしれませんね。
※以下のページにもわかりやすい説明が載っていました↓
でんさいネット 電子記録債権とは