簿記試験対策「退職給付会計」原則法の基本的な処理

簿記の試験で出題される退職給付会計には「原則法」と「簡便法」の二種類があり、総合問題なんかをみていると、どちらかといえば簡便法で出題されているものが多いような気がしています。実際に統計を取ったわけではないのでなんともいえませんが、原則法だと資料が多くなってくるし他の論点の間に挟むなら簡便法の方が出題しやすいように思えます。

しかしながら、「原則法はやらなくていい」というようなことでは全くないわけで、むしろテキストや問題集では原則法をメインに取り扱っていて、最後2ページ(2問)ぐらいで簡便法、というような構成になっているものが多いでしょう。

原則法と簡便法ではかなり処理の重さに差があることから、テキストなどで対策するにあたっては原則法メインでやっていくことになる、ということでしょう。そこで、今回はそんな「退職給付会計」の「原則法」について、基本的な部分を確認していくことにします。

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退職給付制度の概要

まず「退職給付」とは一体なんなんでしょうか?普通に被雇用者として3年以上とか5年以上とか働いていると、退職金を受け取る権利が発生することが多いかと思います。で、それは一時で受け取るものばかりではなく、年金形式で受け取っていく場合も考えられます。その2つ、つまり「退職一時金」と「企業年金」が会計上の「退職給付」になるとのことです。

この退職給付、日本では「労働の対価として支払われる賃金の後払いである」との立場をとっています(賃金後払説)。となると退職金を受け取るべき被雇用者が在職している間に、すでに企業側に「退職給付」の支払義務が生じていることになります。
しかもその支払は今すぐ!というわけではなく、ずっと先の将来に行われることになってきます。

すると、「将来に支払うべき債務⇒把握しておかなくてはならない」
「支払うのはずっと先のこと⇒把握したものを現在価値に割り引かなくてはならい
ということになってきます。そこで企業側の処理として、「退職給付として支払が見込まれるもののうち、現在までに発生している金額を割り引いたもの」を「退職給付債務」とすることになっています。

しかし、企業としても「退職給付」の支給に向けてなんら準備をしていないということはありません(少なくとも簿記の試験では)。退職給付専用として、他の資産とは別に積み立てられている一定の資産があるはずです。こいつらを「年金資産」として退職給付債務から控除していくことになります。

退職給付引当金の算定と処理

この後は、上記の「退職給付債務」と「年金資産」、それに加えて当期に新たに発生した費用(勤務費用)や債務、資産の利息部分を差引することによって、実際に当期に把握して引当てておくおくべきである「退職給付引当金」の金額を算定していくことになります。

このときの計算は、まず当期の勤務費用についてはなんか問題文とかに書いてあると思うので、それに退職給付債務に一定割合を掛けた「利息費用」を足し、そこから年金資産の運用収益を控除することによって、当期の「退職給付費用」を算定することになります。
なお、この計算は「期首の段階」で行うことに注意しておく必要があります。

では、実際に設例で確認していきます。

 退職給付引当金の算定

当期首における退職給付債務の金額は1,000円、年金資産は500円であった。
・債務の割引率:1%
・運用収益率:1%
・当期の勤務費用:100円

 退職給付費用
勤務費用100円+利息費用10円-運用収益5円=105円仕訳
退職給付費用 105 / 退職給付引当金 105退職給付引当金の金額
もともとあった金額:債務1,000円-資産500円=500円
500円+当期発生分105円=605円
∴退職給付引当金:605円

これだけであれば単純に足し引きするだけで退職給付引当金の計算ができるので簡単です。しかし、退職給付債務にしても年金資産にしても、ずっと加算され続けるわけではなく、どこかで退職一時金や年金を支払ったり、年金資産については掛金を拠出することもあるでしょう。そういったことについても考慮して算定を行う場合、ちょっと複雑になっていきます。

一時金、年金の給付と年金資産の掛金拠出

退職給付を行ったり年金の掛金を拠出したりと、勤務費用や利息費用以外にもいくつかの理由で退職給付用として引き当てておくべき金額は変動してきます。具体的には「一時金を支給した場合」と「年金を支給した場合」、それに「年金の掛金を拠出した場合」の3つのパターンがあります。それぞれ確認していきましょう。

退職一時金の支給

これは企業が退職者に対して一時に退職金の支給を行う場合になります。この支給により、「退職給付債務」が減少し、結果として退職給付用に積み立てておかなくてはならない金額も減少することになります。

このときの処理は↓

 当社は、退職金10円を現金にて支給した

仕訳
退職給付引当金 10 / 現金預金 10

退職給付債務そのものは帳簿上に載ってこないため、この処理をした際に、ちゃんとその減少分を覚えておかなくてはなりません。

退職年金の支給

退職者に年金形式で給付を行う場合には、あらかじめ「年金掛金」として拠出してあったものから、直接支払われていくことになるため、年金資産が減少すると同時に、退職給付債務も減少することになります。

このため、退職給付引当金の算出に関しては貸借ともに「同額の減少」ということになってくるため、変動がなく、特に処理をする必要はありません。

 既退職者に年金10円が支給された

仕訳なし

特に処理が無いわけですが、年金資産および退職給付債務が減少していることに注意が必要になってきます。

年金の掛金拠出

企業が年金基金に掛金を拠出した場合にも退職給付引当金の金額は変化してきます。この場合は「年金資産」が増加することになるため、引き当てておくべき金額は減少することになります。

処理としては↓

 年金基金に掛金を10円拠出した

仕訳
退職給付引当金 10 / 現金預金 10

一時金の支給の場合と同じ仕訳になっていますが、今度は債務の減少ではなく資産の増加によるものであることに気をつけなくてはなりません。

上記を含めた計算

これらの処理を含めて、さっきあった設例をもう一回見てみることにします。

 退職給付引当金の算定

当期首における退職給付債務の金額は1,000円、年金資産は500円であった。
・債務の割引率:1%
・運用収益率:1%
・当期の勤務費用:100円

・退職一時金の支給:10円
・退職年金の支払:10円
・年金掛金の拠出:10円

 退職給付費用
勤務費用100円+利息費用10円-運用収益5円=105円仕訳
退職給付費用 105 / 退職給付引当金 105退職給付引当金の金額
もともとあった金額:債務1,000円-資産500円=500円
退職一時金の支給:債務△10円
年金の支給:債務△10円、資産△10円
年金掛金の拠出:資産+10円

⇒債務:1,000円+当期費用、利息110円-一時金、年金20円=1,090円
⇒資産:500円+運用5円-年金支給10円+掛金拠出10円=505円

債務1,090円-資産505円=585円
∴退職給付引当金:585円

退職一時金を支給した分、それから年金掛金を拠出した分に反応して、引き当てておくべき金額が減少しているのがわかります。正直ここまででも十分面倒な感じなんですが、利息費用とか運用収益の計算は、期首に行う「予測」に過ぎません。実際に期末になってみたら、ちょっと違った結果になっていた、なんてこともあるでしょう。そこで生じるのが、「数理計算上の差異」です。さらに退職金の給付水準を改定することも考えられます。その場合には「過去勤務費用」とかいうのも生じてくることになります。

数理計算上の差異と過去勤務費用 ※導入のみ

数理計算上の差異や過去勤務費用は、退職給付債務などを計算するときの「予測」と「実績」の乖離などによって生じてきます。この差異は発生した年度に費用として処理することもできますが、簿記の試験では、「残存勤務期間で按分していく方法」によって費用処理することが多くなるでしょう。あと、「会計基準変更時差異」なるものも(昔の本には)ありましたが、もうなんかアレな奴なんでスルーします。

で、こいつらが生じているときには、「期末の債務、資産の実際の金額」が問題文のなかに示されているはずです。それと比べて差がでている分を期間配分していくことになるんですね。

具体的には↓

 前期末の退職給付引当金が100円、当期の退職給付費用は10円であった

期末において
・実際の退職給付債務:250円
・実際の年金資産:100円
ということが判明した。

※数理計算上の差異は、発生年度より10年で費用処理する

 期首に計算した退職給付引当金
100円+当期費用10円=110円

期末において判明した実際に引き当てるべき金額
債務250円-資産100円=150円

未認識数理計算上の差異
実際150円-予測110円=40円(不足)

数理計算上の差異の費用処理
40円/10年=4円
仕訳
退職給付費用 4 / 退職給付引当金 4

期末退職給付引当金の金額
110円+4円=114円
∴退職給付引当金:114円

みたいな感じです。本来は「昨年とか一昨年の未認識分とセット」とか「年金試算の運用益が上回って利得になった」とかもっとめんどくさいですが、ここでやるとまた長くなってしまうので、今度時間があったらまともに確認しておきたいと思います。

あと、「数理計算上の差異」に関しては、発生年度ではなく発生の翌年度から費用処理する場合もあるので、しっかり問題文を読んでいないと終わります。

まとめ

退職給付会計はかなり凶悪な論点であるため、今回のような基礎的な内容でも結構覚えるのに時間がかかる印象ですし、ふとしたことで「あれ、なんだっけ?」とかなるような状態です。この先も退職給付については何回か記事にしていく予定ですので、もうちょっと勉強して、わかりやすく伝えられるようにしていきたいです。

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