簿記試験対策「商品売買」~返品・値引・割戻及び割引の処理~

普通にお店なんかを経営しているとき、
その「利益」を算定するうえで真っ先に考えるのが
「売上」と「仕入」に関することなんじゃないでしょうか?
その先にある販売費および一般管理費やその他の損益なんかも大切でしょうが、、
まず、何よりも先に「仕入」をして、その商品を売却、仕入額を超える「売上」を計上しないと商売が成り立ちません。

ゆえに、「商品売買」はお店の儲けの原動力となっている!といっても過言ではないでしょう。
でも、商品を仕入れて、普通に売ってハイ終わり、ってことにはなりませんよね…
絶対に「品違い」とか「輸送中に破損」とかなんだかんだあって、
返品されてきたり、ちょっと値引きしたりなんてことがあるでしょう。
というか、簿記の試験だとそのようなことがないパターンの方が少ないんじゃない?とも思います。

ということで、今回はそんな商品売買における「返品・値引・割戻」と「割引」の処理について確認していきます。

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Contents

返品・値引・割戻

最初に、「返品・値引・割戻」の処理について確認します。
正直この3つはそこまで難解な奴らじゃないと思いますので、
普通にさらっといきたいと思います。

返品の処理

まず、商品を仕入れたらぜんぜん違うのがきた…とか、
逆にこっちから商品を送ったとき、違うカゴ車を送ってた…
みたいなことがあるかもしれません(ないほうがいいですが)。
そんなときには「仕入戻し」や「売上戻り」ということになります。
言い方は違いますが、ようはどっちも「返品」ってことですよね。
で、この場合の処理は↓

・仕入戻しの場合の仕訳
 買掛金 ○○ / 仕 入 ○○
・売上戻りの場合の仕訳
 売 上 ○○ / 売掛金 ○○

というように、その取引が発生したときの逆仕訳をして、
それぞれ「仕入高」、「売上高」から控除することになります。

値引の処理

次に仕入、売上に対して「値引」があった場合です。
例えば、商品を仕入れたけど輸送中に潰れていたとか、
日焼けして劣化してしまっていた、とかそういうことがあるかもしれません。
こういうときには仕入/売上代金の一部を「仕入値引」や「売上値引」として処理します。
そのときの仕訳は↓

・仕入値引の場合の仕訳
 買掛金 ○○ / 仕 入 ○○
・売上値引の場合の仕訳
 売 上 ○○ / 売掛金 ○○

処理としては返品の場合とまったく変わりません。
しかし、値引が返品と違うのは、商品自体は返らないということです。
「仕入値引」の場合は特に気にすることはないんですが、
「売上値引」の場合は、この違いによって後々「原価率の計算」に影響してくるため注意しておく必要があります。

割戻の処理

最後に、「割戻」の処理について確認していきましょう。
これは上記の2つのようになんかトラブルがあって返品されたり値引したりということではなく、
たくさん買ってくれた人に対するリベートのことです。
例えば、どんなものでもたくさん使う又は売る予定だったら、それなりの個数を購入することになりますよね。
そうやってたくさん買ってくれた客に対しては、売る側としても「代金を一部免除」してやることになります。
で、そのようなときに「仕入/売上割戻」を用いて処理を行うことになります。
その仕訳は以下↓

・仕入割戻の場合の仕訳
 買掛金 ○○ / 仕 入 ○○
・売上割戻の場合の仕訳
 売 上 ○○ / 売掛金 ○○

はい、またしてもまったく同じ仕訳になっています。
ここまでくると分ける必要あんのかよ…と思ってしまいがちですが、
やはり原価率の計算で扱いが変わってきますので、それぞれ分別して覚えておいた方が無難かと思います。
ちなみに「割戻」の場合も商品自体は戻りません。仕入、売上のみの減少となります。

売上返品と売上値引/割戻の処理の違い

さて、先程までの話しの中にあった、「商品が戻るかどうかによる違い」についてです。
話を整理しておくと、

  • 返品⇒代金が戻る、商品も戻る
  • 値引⇒代金のみ戻る
  • 割戻⇒代金のみ戻る

ということでした。返品⇔値引・割戻の関係ですね。
それでこの違いが影響してくるのが「原価率を計算する場合」になります。

で、この原価率を算定するための計算式は「売上原価/売上高」ということになります。
これを簡単な例で確認してみましょう↓

原価率の計算
 期首商品棚卸高:100円
 当期商品仕入高:500円
 期末商品棚卸高:100円
 売上高:625円

この場合、売上原価を算定します↓
「期首100円+当期仕入500円-期末100円=500円(売上原価)」
ということになりますよね。
この500円を売上高625円で割ることで原価率が出てきます。

売上原価500円/売上高625円=0.8
∴原価率80%

ですよね。しかし、さっきの「返品」や「値引・割戻」が入ってくると、ここで用いる仕入高や売上高の数字が変わってくることがわかると思います。
そうなると原価率の算定で使う仕入/売上の金額は返品等を考慮する前?後?ってことになります。
これについて、原価率の算定の流れに沿って確認していきます。

当期商品仕入高の算定

まずはじめに、「仕入高」を算定していくことになります。
まずは商品を仕入れます、これでまず暫定の仕入高がでてきました。
次に、ここから「返品・値引・割戻」を控除していきます。
そうすると当期の「純仕入高」がでてきます。
ここでは、商品そのものを戻そうが、一部代金について値引や割戻を受けようが、
特に関係なく「仕入高」が変動していくことになりますよね。
ゆえにこの段階ではまだ商品が戻るかどうかに関わらず、全部控除してしまって大丈夫、ということになります。

売上原価の算定

次に売上原価の算定に移ります。
ここでは先程の例のように「期首商品+当期仕入-期末商品=売上原価」という計算をしていくことになります。
で、着目すべきは「期末商品」のところです。
この金額について、商品が品違い等により返品された場合(売上戻り)は、その商品が手元に戻ってくるわけですから増加します。
よってこれは売上原価の減少につながります。
しかし「売上値引・売上割戻」の場合には商品は戻ってきません。
と、いうことは「値引・割戻」があった場合でも期末商品の金額は変わらず、売上原価の変動は起こりません。
この違いによってこの後の原価率の算定が変わってくることになります。

売上高と原価率の算定

最後に売上原価を売上高で割って原価率を算定することになります。
しかし、さっき「売上原価」を算定したときに「返品」と「値引・割戻」の間で売上原価の金額が変わってしまうことに気がつきました。
すると、売上高から控除する金額も同じように分けないと、そもそもの原価率が変わってきてしまうことになります。ちょっとわかりにくいので設例で確認してみます。

原価率の計算(返品がある場合)
 期首商品棚卸高:100円
 当期商品仕入高:500円
 期末商品棚卸高:100円
 売上高:625円
 ・売上に対して50円の返品があったが一切未処理である。

そうなると、売り上げから控除される金額が50円減って575円、
ついでに商品が戻ってきたので期末商品が150円となります。
この場合の解答は↓

売上原価:100円+500円-150円=450円
売 上 高:575円
売上原価450円/売上高575円=0.78(小数点以下第三位四捨五入)
∴原価率78%

ということになります。続いて値引があった場合について見てみます。

原価率の計算(返品と値引がある場合)
 期首商品棚卸高:100円
 当期商品仕入高:500円
 期末商品棚卸高:100円
 売上高:625円
 ・売上に対して50円の返品と50円の値引があったが一切未処理である。

先程と同じように売上高625円から50円を控除し、期末商品を50円足します。
そして値引については売上の残り575円からさらに50円控除するだけの処理になります。
商品自体は戻ってこないので、値引では期末商品は変わりませんね。
そのまま処理をすると以下のようになります↓

売上原価:100円+500円-150円=450円
売 上 高:525円
売上原価450円/売上高525円=0.86(小数点以下第三位四捨五入)
∴原価率86%

値引のせいで原価率が変わってしまいました…
そうですよね、「値引・割戻」については原価部分に変動がなく、売上の利益部分の変動のみになってきますから、分母のみの変動になり、原価率そのものが変わってきます。
では、どっちの原価率を採用するべきなんでしょうか?

これについて一般的な簿記の問題では、「原価率」として使うのは
「値引・割戻」を控除する前の原価率となるようです。
つまり、この2つが既に売上高から控除されている場合には、
一旦足し戻してから原価率を算定することになります。
もともと控除されていない場合には原価率を算定してから控除します。
さっきの設例では値引を無視して計算する感じですね。

原価率の算定における売上戻り・値引・割戻の処理
・売上戻り:控除して計算
・売上値引:控除しないで計算
・売上割戻:控除しないで計算

仕入割引/売上割引

もうひとつ、「割引」についても確認しておきます。
割引って値引とかとほとんど変わらないように見えますが、
簿記上ではぜんぜん違うものになってしまうので厄介ですね…

一応確認しておきますが、仕入割引/売上割引とは、
掛代金を早めに決済したときに、その一部が割り引かれることです。
公共料金とかを早く払うとちょっと安くなる、みたいなのと一緒ですね。

で、この割引なんですが、「掛代金の決済とは別個の取引」とみなされ、
利息的な性格を有するものとされています。よって仕入や売上から直接控除することはせず、「営業外」の項目として処理します。
そのときの仕訳は↓

仕入割引があった場合
 買 掛 金 ○○ / 現金預金 ○×
        / 仕入割引 ×○(←営業外収益)
売上割引をした場合
 売 掛 金 ○○ / 現金預金 ○×
 売上割引 ×○ /
 (↑営業外費用)

「割引」は見た目が値引と似ているので読み間違えないように気をつけるべきですね…

まとめ

「返品・値引・割戻」については、処理自体はたいしたことないくせに、
原価率の計算になると突然アレになるので鬱陶しいです…
まぁ考え方がわからない場合はそのまま暗記してしまってもいいかな、とは思いますが。

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