FP2級と3級の学科試験を比較、難易度の差はどこから来る?

5月27日のFP技能検定2級・3級を受験された方、お疲れ様でした。合格発表や結果通知の郵送はまだまだ先になりますが、自己採点や合否判定など、可能な限りのことは今のうちにしておくことをお勧めします。

※FP2級・3級の試験後にやるべきことについては以下の記事から↓

さて、今回の試験では2級を受験した方も、まずは3級、という方もいらっしゃると思いますが、FPの試験は、「非常に易しい3級」と「同じような感じなのに難易度が上がる2級」、ここで合格率などに大きな差が生じています。

例えば、2018年1月試験の合格率は以下のようになっています↓

学科試験の比較(2018年1月28日試験)

試験科目合格率
2級学科試験45.63%
3級学科試験80.33%

実技試験の比較(2018年1月28日試験)

試験科目合格率
2級実技試験(日本FP協会)57.45%
3級実技試験(日本FP協会)89.07%

参考:の本FP協会HP 実施試験結果データ

で、今回はこの「2級と3級の難易度の違い」について、今回(2018年5月試験)の「学科試験」を参考に比較し、どこにそんなに差があるのか?などといったことを確認していこうと思います。

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FP技能検定の学科試験はFP協会・きんざいで共通、今回はこれを比較してみます

FP技能検定は、2級にしても3級でも、実技試験に関しては「日本FP協会」または「きんざい」の複数課目からの選択制になっており、選択したものによってその試験実施回の難易度や合格率もそれぞれ変化してくると思います。

※実技試験の課目選択についての詳細記事↓

しかし、学科試験においてはFP協会でもきんざいでも同じ内容の試験となっており、選択の余地がありません。つまりFP2級と3級それぞれの試験の全受験者(一部合格者除く)が同一の試験を受験することになります。つまり試験科目ごとの”難易度のブレ”に左右され易い実技試験よりは、2級と3級の比較には向いていそうですね。

なお、この学科試験なんですが、こちらの方が実技試験と比べて合格率が低く、出題範囲もFPの試験対策で勉強する6つの分野すべてから満遍なく出題されるものであり、この学科試験の攻略が「完全合格」のきっかけ作りになるといっても過言ではありません。

FP3級に続けて2級の受験を検討している場合、この学科試験の難易度の比較によって、何か有効な対策が見えてくるかもしれません。では、以降で実際に試験問題の比較をしていきます。

2級と3級では試験形式に大きな差がある

ここからは、すでに日本FP協会のHPなどで公開されている、2018年5月試験の学科試験で実際に出題された問題を参考に比較をしていきます。

まず、2級と3級の難易度の違いを生じさせる最大の原因であると考えられるのが「試験形式の違い」なんじゃないでしょうか?FP2級の学科試験は「すべて4択問題で60問」であるのに対し、FP3級では「○×問題30問・3択問題30問で合計60問」という出題形式となっています。

実際に今回の試験での問題を見てみると、2級はそれぞれの問題ごとに「適切/不適切なものはどれか」などという文章がついていますが、3級の場合は冒頭で一括して以下のように記載されています。

【第1問】
次の各文章((1)~(30))を読んで、正しいものまたは適切なものには①を、誤っているものまたは不適切なものには②を、解答用紙にマークしなさい。

【第2問】
次の各文章((31)~(60))の( )内にあてはまる最も適切な文章、語句、数
字またはそれらの組合せを1)~3)のなかから選び、その番号を解答用紙にマー
クしなさい。

※2018年5月27日実施 3級ファイナンシャル・プランニング技能検定より抜粋

3級の試験では最初は○×問題であることから、「その文章が正しいかどうか?」だけの判断となり、さらに「×」と解答すべき問題ではすごくわかり易い明らかな数字の間違いが含まれる問題も多く、ある程度テキスト等を読み込んでおけば簡単に気づきそうな内容となっています。

また、後半の3択問題でも単純に数字を当てはめるだけの問題となっている問題が多く、正答率は高くなりそうです。

一方、2級の4択問題はそれぞれの文章を読んで間違っている箇所を探したり、その論点に関してある程度詳細な計算ができなくては解答できないものが多くなっています。

計算が必要な問題の例

Aさんの平成29年分の所得の金額が下記のとおりであった場合の所得税における総所得金額として、最も適切なものはどれか。なお、▲が付された所得の金額は、その所得に損失が発生していることを意味するものとする。

不動産所得の金額:500万円
事業所得の金額:▲150万円
雑所得の金額:▲20万円
一時所得の金額:50万円

※2018年5月27日2級ファイナンシャル・プランニング技能検定 「学科試験 問33」

こういった問題を解答するにはテキストの読み込みだけでなく、問題集や過去問で練習することによって、正答するためのポイントを押さえておく必要がありそうです。

また、「4択」になった分、ある程度まで絞って”あとは勘”で解答する場合の正答率も下がってくるでしょう。これも合格率が下がる要因の一つになっていると思います。FPの学科試験は「60点満点中36点を超えれば合格」となっているため、ギリギリの得点ところで適当につけたのが合ってるかどうか、ということで合否が左右されるパターンも多そうですから…

3級よりも2級の試験の方が問題の文章が長く、正確に読み取る必要がある

次に試験形式の違いに関連して、やはり個別の文章の中から「適切/不適切」を探す4択問題が多いFP2級の問題は「基本的に1問1文」である3級の試験よりも圧倒的に文章量が多く、その点も難易度の差に影響していると思われます。

FPの学科試験は2級・3級とも120分の試験で問題数が60問あるため、単純計算で1問2分で解答しなくてはならないことになります。

この2分という時間、3級の試験のように「1文だけ」読んで考えるのであれば十分な気がしますが、2級の試験のように割りと長い文章をいくつか読んで、その中から正答のポイントとなる箇所を探し出すとなると結構大変かもしれません。

これについても過去問を繰り返し解答したりして”慣れている”場合には余裕が出てくるかもしれませんが、テキストと1問1答形式の問題集だけで勉強しており、試験問題は初見の状態だと結構時間を取られてしまうかもしれません。

やはり、FP2級の試験では実際の試験形式に沿った「4択問題」になれておく必要がありそうです。

同一の論点でも内容が細かくなったり、新たに追加されるような項目がある

最後に、FP2級と3級の試験で出題される範囲の細かい違いについても、思いつく限りで確認しておこうと思います。

2級と3級の試験範囲は「全く同じ6つの分野」からの出題となっていますが、やはり2級の試験では、3級のそれでは問われる可能性が低かった「各論点の詳細な内容」について聞いてくることが多いようです。

ここでは、今回実施された試験での出題と、僕が受験したときに違いを感じた部分を参考に比較していきます。なお、今後また新たに気がついたら追記していくかもしれません。

2級の試験ではデリバティブ取引について細かい内容が出題されている

FP2級の試験では、「デリバティブ取引」に関して3級よりも詳細な内容が出題されるようです。

デリバティブについては3級の試験対策テキストでは「紹介程度」のあっさりした内容でしたが、2級のテキストでは「先物取引」「オプション取引」「スワップ取引」について詳細な記載があった他、今回(2018年5月)の学科試験でも以下のような出題がありました↓

オプション取引に関する次の記述のうち、最も不適切なものはどれか。

  1. コール・オプションの買い手は、「原資産を買う権利」を取得し、その対価であるプレミアム(オプション料)を売り手に支払う。
  2. プット・オプションの売り手は、「原資産を売る権利」を取得し、その対価であるプレミアム(オプション料)を買い手に支払う。
  3. コール・オプション、プット・オプションともに、買い手は権利を放棄することもでき、買い手の最大損失はプレミアム(オプション料)に限定される。
  4. 上場オプションの取引においては、コール・オプション、プット・オプションともに、売り手が自主的に行えるのは買戻しであり、売り手はプレミアム(オプション料)が最大利益となる。

正答:2

※2018年5月27日2級ファイナンシャル・プランニング技能検定 「学科試験 問29」

上記の問題は「オプション取引」に関する問題ですが、これ以上に複雑な「プレミアムの価格変動」について出題される可能性もあり、いちいち考えて解答しなくてはならないため厄介です。

なお、このあたりについては別で記事を書いているのでそちらもご参照ください↓

所得税の他、法人税や消費税の問題が追加されている

FP3級の試験では、「タックスプランニング」の範囲に関して出題されるのは主に所得税に関する事項となっているようで、10種所得や各種控除、確定申告などについて問われているものが多いように感じます。また、青色申告に関する内容も出題されていますが、それぞれの問題で聞かれているのは基本的なことばかりのようです。

一方、2級の試験では所得金額や所得控除について詳しい知識を要する問題が多くなっている他、「法人税法」や「消費税法」関連の問題も出題されています。また、企業の役員(個人)と企業(法人)間での取引に関する問題(例:2018年5月試験 問題39)なども厄介であり、しっかりと対策しておく必要があるんじゃないでしょうか?

個人の相続・贈与だけでなく、事業承継の問題も出題される可能性がある

FP2級の試験では「相続・事業承継」の範囲において、個人の相続・贈与に関連する事項ばかりではなく、「事業の相続」に関する問題が出題される可能性が高くなっているように感じます。

これはもしかしたら3級でも出てくる内容なのかもしれませんが、やはり2級の試験ではより深い内容について聞いてくると思われますので、もし、3級の試験ではさらっと確認して終わりにしていた場合でも、今後FP2級の受験を考えているという方は押さえておくべきだと思います。

また、この論点は近年「後継者不足で廃業増」などとメディアで取り上げられることも多く、今後の試験では狙われることが多くなるんじゃないかと予想しています。

まとめ

今回はFP2級と3級の試験の、難易度の違いがどこにあるのか?ということについて確認してきました。

上記以外にも細かい違いは数多くあると思いますが、個別論点について細かく調べていると終わらなくなってしまうため、ここで一旦締めてあとは気がつき次第追記していこうと思います。

FP2級の受験資格を得るために3級を受験した方も多いと思いますが、難易度が上がってくる2級の試験を攻略するために、当記事を参考にしていただけたら幸いです。

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