財務諸表論試験対策 純資産の部の創設とその表示について

財務諸表論の理論問題対策としての「純資産の部」に関する論点は、簿記論の試験対策でやったような貸借対照表や株主資本等変動計算書の作成やその計算方法に関するものばかりではなく、その創設や他の会計基準との兼ね合いに関する部分も重要になってくるようです。

その中で特に、株主資本の変動額と純利益の関係については「クリーン・サープラス関係」という言葉が結構そこかしこに登場することなどから、本試験でも狙われ易いのではないかと思います。

そこで今回は、税理士試験の財務諸表論の試験範囲である「純資産の部」に関して、その創設から株主資本と純利益の関係維持のための措置までを、順を追って確認していきたいと思います。

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「純資産の部」の創設

昔は、貸借対照表上の資産・負債・資本については明確な定義がなかったものの、「資本」というものは一般的に「財務諸表の報告主体の所有者(株主等)」に帰属するものであると考えられています。

そして、いつの時代の話かはよくわかりませんが、以前の貸借対照表には「資本の部」があり、そこでさらに払込資本と利益の留保額の2つに分けられていたとのことです。

で、最近では会計基準の国際的なコンバージェンスが云々ということで、「財務会計の概念フレームワーク」が公表され、資産・負債についての積極的な定義がなされています。

そのなかで資本と同じく、貸借対照表の貸方に記載されている負債について、概念フレームワークでは「過去の取引又は事象の結果として、報告主体の経済的資源を放棄したり引き渡したりする義務又はその同等物」と定義されました。

しかし、資本を報告主体の所有者に帰属するもの、負債を返済義務のあるものとした場合、そのどちらにも該当しない項目が出てきてしまいます。それは「新株予約権」や「非支配株主持分」などといったもので、これをどう処理するのか?ということが課題となりました。

そこで、貸借対照表の貸方に、負債でも資本でもない「中間区分」を設けるべきだという考えがありました。しかし、そんなよくわからないものが損益計算との関係で問題を起こさないのか?ということや、何よりも世界に目を向けるとそのような区分を解消する動きがあったことから、別の方法を取ることになりました。

それが、資産性を持つものを「資産の部(借方)」、負債性を持つものを「負債の部(貸方)」に記載し、そのどちらでもないものを新しく創設した「純資産の部」に押し込むという方法です。

これでやっと、現在の見慣れた貸借対照表の形になりました。しかし、「金融商品に関する会計基準」の導入があり、その結果としてこの「純資産の部」では大きな問題が生じることになってしまいます。

その他有価証券の時価評価とクリーン・サープラス関係の崩壊

資産性を有するものを資産の部、負債製を有するものを負債の部、そしてそれ以外のものを全部新しく創設された「純資産の部」としたことで、資産、負債、株主資本のどれにも該当しないものが純資産の部に記載されることになりました。

しかし、この「純資産の部」に表示されているものは、株主資本だけではありません、資産と負債、そのどちらでもないということですから当然ですね…で、そのなかには「金融商品に関する会計基準」に基づく「その他有価証券評価差額金」も含まれることになりました。

「金融商品に関する会計基準」では、その他有価証券は、全部純資産直入法または部分純資産直入法により、その時価の変動額が損益計算書を通さずに、そのまま純資産の部に記載されることになります。

※その他有価証券については以下の記事から↓

cropped 20161112 121702 1 1 - 財務諸表論試験対策 純資産の部の創設とその表示について
簿記試験対策「有価証券」~保有目的による種類分けと会計処理~
またしても株価がものすごい下落を見せています。これは一時的な調整なのか、 それともリーマンショックのような悲惨な末路が… などと考えるの...

すると、これまでは普通に成立していた「クリーン・サープラス関係」が成立しなくなってしまいます。

クリーン・サープラス関係は、「資本取引を除く株主資本の変動額」と「損益計算上の純利益の額」が一致するという関係(もともとは財産法と損益法での利益額が一致するという関係)で、利益や株主資本というものが財務報告の中で特に重視されていることは、「貸借対照表の純資産の部の表示に関する会計基準」の以下の記述からわかります↓

純資産の部の表示 29

財務報告における情報開示の中で、特に重要なのは、投資の成果を表す利益の情報であると考えられている。報告主体の所有者に帰属する利益は、基本的に過去の成果であるが、企業価値を評価する際の基礎となる将来キャッシュ・フローの予測やその改定に広く用いられている。当該情報の主要な利用者であり受益者であるのは、報告主体の企業価値に関心を持つ当該報告主体の現在及び将来の所有者(株主)であると考えられるため、当期純利益とこれを生み出す株主資本は重視されることになる。

参考:貸借対照表の純資産の分の表示に関する会計基準

そして、「金融商品に関する会計基準」の導入、つまりはその他有価証券の評価差額金が純資産に直入されることによって崩壊したクリーン・サープラス関係は、この純利益と株主資本の関係として重要なものでした。

このままでは貸借対照表と損益計算書の連携が保たれていないということになってしまいますから、これは何としても取り戻す必要があります。そこで、「純資産の部」を株主資本と株主資本”以外”の部分に分けることで対応を図ることになりました。

株主資本とそれ以外に分ける処理で復活

「純資産の部」には貸借対照表の貸方項目のうち、負債性を有さないと認められるものが詰め込まれており、その中で損益計算を通さずに直入される「その他有価証券」の変動額により、財務報告で重要視される利益と株主資本の関係であるクリーン・サープラス関係が成り立たなくなってしまいました。

これに対応するため、つまり重要な「株主資本」を他の純資産に属する項目と分けるために、純資産の部を「株主資本」と「株主資本以外」に区分することになりました。

この区分を設けたことにより、損益計算での純利益と、株主資本の当期変動額(資本取引を除く)部分が一致していることを上手く表示することができるようになりました。

これにより、「金融商品に関する会計基準」によって崩壊したクリーン・サープラス関係が、「貸借対照表の純資産の分の表示に関する会計基準」の措置によって取り戻されたことになります。

まとめ

今回は、税理士試験の財務諸表論に関して、貸借対照表における純資産の部の創設とその表示、また、その他有価証券の時価評価との兼ね合いで崩れたクリーン・サープラス関係を取り戻した経緯について確認してきました。

財務諸表論の本試験では、こうしたいくつかの会計基準、さらには「概念フレームワーク」魔で絡んでくるような論点が狙われてきそうな気がします。

また、会計基準等を設定するうえでどのような問題が生じ、そこでどのような意見があったのか?などについても押さえておく必要があるようで、そういった議論があったものについてはこれ以外にもいくつもあると思われます。

とりあえず、財務諸表論の理論問題対策として価値がありそうなものについては、今後もこのブログを使って記事にまとめていきたいと思います。

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