簿記試験対策「外貨建会計」~外貨建有価証券の処理~

前回の記事に引き続き、外貨建会計について記載していきます

※前回の記事、外貨建会計の基本です↓
簿記試験対策「外貨建会計」~外貨建取引の期末換算と為替予約~

外貨建で取引を行うのは、なにも売掛金や買掛金などといった営業に係るものばかりではありません。様々な目的で保有する「有価証券」も外貨建で表示されることがあるんですね。

※有価証券の基本的な処理については以下↓
簿記試験対策「有価証券」~保有目的による種類分けと会計処理~

そこで今回は、外貨建で表示された有価証券の期末処理について、保有目的区分ごとの4つに分けて確認していきます。

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売買目的有価証券

時価の変動分がそのまま当期の損益となる売買目的有価証券では、為替の換算差額についても「有価証券評価損益」として処理します。つまりその有価証券の時価と、決算日の為替レートを掛けた金額が貸借対照表上の「有価証券」となり、帳簿価額との差額を「有価証券評価損益」とするってことですね。

設例で確認してみましょう。

 当社は売買目的として海外A社の株式100ドルを取得した。
当該株式の期末時価は110ドルであった。
・取得日レート:1ドル100円
・決算日レート:1ドル110円
 取得日の仕訳
有価証券 10,000 / 現金預金 10,000
※株式100ドル×為替レート100円/ドル期末の仕訳
有価証券  2,100 / 有価証券評価損益2,100
※期末時価110ドル×為替レート110円/ドル=12,100円
期末12,100円-取得時10,000円=2,100円(評価差額)

コミコミの期末時価と取得価額を比べて、差額分が評価差額として当期の損益になるってだけです。これは単純ですね。

満期保有目的の債券

満期保有目的の債券は、償還日まで持ち続けて元本と利息を回収するものであるため、価格変動の影響は無視、期末においても取得原価で表示することになっていました。しかし、価格変動リスクの影響は受けないにしても、「為替変動リスク」の影響を無視することはできません。よって、取得原価と期末の為替レートを掛けて、その差額は「為替差損益」とすることになっています。

また設例でみてみましょう

 当社は満期保有目的として海外A社の債券100ドルを取得した。
当該株式の期末時価は110ドルであった。
・取得日レート:1ドル100円
・決算日レート:1ドル110円
 取得日の仕訳
投資有価証券 10,000 / 現金預金 10,000
※株式100ドル×為替レート100円/ドル期末の仕訳
投資有価証券  1,000 / 為替差損益   1,000
※100ドル×為替レート110円/ドル=11,000円
期末11,000円-取得時10,000円=1,000円(評価差額)

ここまでは普通にいけると思います。しかし、満期保有目的の債券は「債券金額よりも高い価額または低い価額」で取得したときに、「その差額が金利の調整部分」と認められる場合には「償却原価法」を適用しなくてはなりません。

満期保有目的の債券:償却原価法ありの場合

外貨建満期保有目的の債券に償却原価法の適用がある場合には、ちょっと面倒ないくつかのステップを踏んでいかなくてはなりません。以下、順に確認していきます。

  1. 外貨のまま当期の償却額を算定する。
  2. 当期の償却額に期中平均レートを掛ける(有価証券利息部分)
  3. 帳簿価額と償却額を足す
  4. 外貨のままの償却原価×期末レート=期末の評価額
  5. 「4」-「3」=為替差損益

ということになっています。当期の償却額の算定に「期中平均レート」が用いられていることが特徴です。ちょっとわかりにくいのでこれも設例で確認しましょう。

 当期首において、海外B社の社債100ドルを発行と同時に97ドルで取得した。この債券の償還期間は3年である。
・取得日レート:1ドル100円
・期中平均レート:1ドル110円
・期末レート:1ドル120円
※償却原価法は「定額法」を用いるものとする
 取得時の仕訳
投資有価証券 9,700 / 現金預金 9,700
※97ドル×100円/ドル
期末の仕訳
投資有価証券  110 / 有価証券利息 110
※償却額1ドル×期中平均レート110円/ドル
投資有価証券 1,950 / 為替差損益 1,950
※償却原価98ドル×期末レート120円/ドル-9,700円-110円
投資有価証券の期末帳簿価額
11,760円

期末の帳簿価額だけなら簡単な話なんですが、償却額とそれに続く換算差額の算定がややこしくなっています。ただ、実際の簿記の試験で「時間がない!」とか「問題が難しすぎ!」という場合には、最後の帳簿価額だけでも求めておくようにしたほうがいいかもしれませんね。

関係会社株式

関係会社株式は、子会社や関連会社の株式を保有している場合に用いられる科目で、期末での時価評価はせず、取得原価で評価することになっていました。さらに、これらが外貨建であったとしても、為替レートの変動による影響は無視し、一切処理を行いません。

こいつらは「事実上の事業投資」とみなされているため、市場で頻繁に売ったり買ったりということもなさそうですし、外貨建会計では「減損」でもしてこない限り特に気にする必要はないみたいです。

その他有価証券

その他有価証券は、上記の3種類の保有目的に該当しないものなので、いろんなパターンがあり、それらが外貨建であった場合の処理に影響してきます。ここでは、簿記の試験で出てきそうな、「時価がわかる株式」、「時価がない株式」、「償却原価法を適用する債券」について確認していきます。

時価のわかる株式

まず、時価がわかる外貨建の株式を「その他有価証券」として保有していた場合の処理です。この場合外貨建のまま時価で評価した金額に期末レートを掛けてやることになります。

それで算出された差額は「全部純資産直入法」または「部分純資産直入法」により純資産に直入or当期の損益とします。

 当期にその他有価証券として海外A社株式を100ドル取得した。
この株式の期末時価は110ドルであった。
・取得日レート:1ドル100円
・期末レート:1ドル110円
 取得時の仕訳
投資有価証券 10,000 / 現金預金 10,000
期末の仕訳
投資有価証券  2,100 / その他有価証券 2,100
評価差額金
※外貨建期末時価110ドル×期末レート110円/ドル-10,000円

時価がない株式

今度は時価がない、時価を把握することが極めて困難な場合です。こっちは時価がわからないので、取得原価と期末レートを掛けて換算差額を算出することになります。

 当期にその他有価証券として海外A社株式を100ドル取得した。
この株式の時価を把握することはきわめて困難である。
・取得日レート:1ドル100円
・期末レート:1ドル110円
 取得時の仕訳
投資有価証券 10,000 / 現金預金 10,000
期末の仕訳
投資有価証券  1,000 / その他有価証券 1,000
評価差額金
※帳簿価額100ドル×期末レート110円/ドル-10,000円

償却原価法を適用する債券

最後に、償却原価法を適用する場合の処理です。その他有価証券は満期保有目的の債券と違い、時価評価をしないといけないため、同様の状況でも少し違った処理となってきます。
以下、また順を追って確認していきます。

  1. 外貨のまま当期の償却額を算定する。
  2. 当期の償却額に期中平均レートを掛ける(有価証券利息部分)
  3. 帳簿価額と償却額を足す
  4. 外貨のまま時価×期末レート=期末の評価額
  5. 「4」-「3」=その他有価証券評価差額金

時価で評価している分換算差額になる部分が変動しますね。また、満期保有目的の債券では換算差額は為替差損益となっていましたが、その他有価証券では、さっきの株式の場合と同じく「その他有価証券評価差額金」として純資産に直入、または当期の損失とします。

さて、これも設例でみていきます。

 当期首において、海外B社の社債100ドルを発行と同時に97ドルで取得した。この債券の償還期間は3年である。
なお、この債券はその他有価証券として保有しており、債券の期末時価は110ドルであった。
・取得日レート:1ドル100円
・期中平均レート:1ドル110円
・期末レート:1ドル120円
※償却原価法は「定額法」を用いるものとする
 取得時の仕訳
投資有価証券 9,700 / 現金預金 9,700
※97ドル×100円/ドル
期末の仕訳
投資有価証券  110 / 有価証券利息 110
※償却額1ドル×期中平均レート110円/ドル
投資有価証券 3,390 / その他有価証券 3,390
評価差額金
※期末時価110ドル×期末レート120円/ドル-9,700円-110円
投資有価証券の期末帳簿価額
13,200円

この例ではその他有価証券の時価が上昇していましたが、逆に時価が下落したりすると混乱する可能性があります(特に図表みたいなのを書いて計算している場合)。ただ、そういった場合にも「処理の流れ」をしっかり把握しておけば意外と何とかなりそうな気がしています。
“気がする”だけかもしれませんが…

外貨建投資有価証券の減損処理

最後に、外貨建の投資有価証券で減損があった場合についても確認しておきます。
やり方は至って普通です。時価がある場合にはその時価と決算日レートを掛ける。
時価がない場合には実質価額と決算日レートを掛けることになります。そこから帳簿価額との差額を求めます。

そうやって算出された評価差額は、「投資有価証券評価損益」または「関係会社株式評価損益」として当期の損失にします。円建ての場合との違いは決算日の為替レートを掛けることぐらいなのでそんなに大変じゃないかと思います。

まとめ

今回は外貨建の有価証券の処理について確認してきました。正直、大変なのは「償却原価法」を適用する場合だけだと思いますので、それさえ何とかなってしまえば実際の試験でも解答できるような気がしています。ただ、償却原価法の処理は時間もかかりそうですし、できれば出題して欲しくないです…

外貨建の話では、これ以外のところでもちょいちょい出てくるかもしれませんが、毛嫌いせずにやっていきたいと思います。

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