簿記試験対策「固定資産」~有形固定資産の減損会計①~

簿記の試験対策もこれで何記事目でしょうか、
いや、そんなにないんだから数えろよ!って感じですが、無駄なことはしない主義なのでやめます。

で、今回は「固定資産の減損会計」についてです。
「減損」といえば有形固定資産だけでなく、有価証券や無形固定資産なんかでも考えられる事態ですが、
今回は最も重い論点である「有形固定資産の減損」についてのみ触れていこうと思います。

この有形固定資産の減損について、僕が感じることのすべては「もう無理」の一言で表現することができます。
いやね、「普通に減損してます、ハイ計算してどうぞ!」ってだけなら別にいいんですよ、
でも、グルーピングして、減損の兆候があるかどうかで分けて、認識・測定して、
それでもって共用資産がうんぬんかんぬん…
当然ですがイヤになります。
しかし、「固定資産の減損」が本試験で出題されるかどうかというと「される」ということは間違いないでしょう。
というわけで、減損についてもう一度しっかり確認すべく、
今回から複数回に分けて、減損についてやっていこうと思います。

スポンサーリンク

Contents

そもそも「減損」って?

まずこっからです、減損については平成14年8月9日の企業会計審議会、
「固定資産の減損に係る会計基準の設定に関する意見書」で次のように述べられています。

3.固定資産の減損とは、資産の収益性の低下により投資額の回収が見込めなくなった状態であり、減損処理とは、そのような場合に、一定の条件の下で回収可能性を反映させるように帳簿価額を減額させる会計処理である。

参照:中央経済社 編(2012)「会計法規集」72頁

ちょっと硬すぎる感じなんですが、とにかく固定資産に投資した金額が、
その稼動期間全体を持ってしても回収できそうに無いと、
それならば回収可能な金額まで帳簿価額を減額しておかないとならないね、って感じの処理かと。

「稼動期間全体」をもって回収が可能かどうかを判定する理由としては、
将来(この後)の分だけみて「あ、回収できなそう…」ってなったとしても、
過去に回収した分もあわせるとトータルで投資額が回収できている可能性もあるから、
ってことらしいです。ややこしいですね。
ここで稼動期間全体の投資額が回収できそうであればいいんですが、
ちょっと無理そうだと、そういう場合には帳簿価額を「回収可能な金額」まで引き下げてやらないとなりません…

回収可能性を反映する価額

で、このときの回収可能な金額って何?ってとこなんですが、
それが「使用価値」「正味売却価額」のどっちか高い方の金額、ということになるんですね。

使用価値

まず「使用価値」について、
これは資産をこの後もずっと使って、使い終わったらそのときの価値で処分した場合の将来キャッシュフローの現在価値を合計したものです。
これはわかりやすいですね、固定資産を最後まで使用したら鉄くずとか中古とかで売って、その得られる金額の現在における価値を測定して帳簿価額にしてしまおうというものです。
以下設例で具体的に確認してみます。

固定資産Aは今後3年間にわたり、毎期100円のキャッシュフローを生じさせ、
3年後には100円で売却できると見込まれた。
割引率を1%とした場合の固定資産Aの使用価値は?
1年後のキャッシュフロー
⇒100円÷1.01=99円
2年後のキャッシュフロー
⇒100円÷1.01÷1.01=98円
3年後のキャッシュフロー
⇒100円÷1.01÷1.01÷1.01=97円
⇒売却価額100円÷1.01÷1.01÷1.01=97円
99円+98円+97円+97円=391円  ∴使用価値391円

みたいな感じです。割引されている分普通に100円を3年間得てから100円で売却した場合よりもちょっと少ない金額になっています。

正味売却価額

次に「正味売却価額」です。
こちらは現時点での資産の売却価額から処分費用の見込額を控除したものです。
投資額の回収ができそうもない資産について、そのまま使った場合の将来キャッシュフローの現在価値よりも、
今の段階でどっかに売ってしまったほうが高い回収額が望める、ということになった場合、
よっぽどのことがない限りその資産については諦めて売ってしまうほうがいいように思えます。
そこで、「正味売却価額」の方が高ければこちらを減損後の帳簿価額として採用するんですね。

減損処理する?しない?

減損処理後の帳簿価額に何を使うのかがわかったところで、
次は減損処理の流れについて確認していきます。
「投資額の回収が見込めない」ことを判断するにあたり、
“多分むりっぽいから”とか”買ったらすぐ新しいの発売されたし…”みたいな適当な感じじゃダメですよね。
だからといってひとつひとつの資産や資産グループに対していちいち計算して減損してないか判断する、
というのも実務的に無理であることは明らかです。
なので、減損処理をするかどうかの判定は一定のルールに従ってやっていくことになっています。
ちなみに、簿記の試験対策としてはこれもちゃんと覚えておかないと、
「各種の資産の中から減損処理するものを自分で選ぶ」的な問題が出題されたときに困ってしまいます。
まぁわかってても時間なくて適当に一個減損してみたりとかするんですが…

で、その減損処理するかどうかを判定する流れは以下になります↓

減損の兆候を把握する

まずは「減損の兆候」を把握することからはじめます。
保有する固定資産を全部調べていたらきりがないので、
とりあえずそれっぽい奴をピックアップしてみるってことですね。
減損の兆個があると判断するための基準は、
「資産や資産グループから生じる損益、キャッシュフローなどが継続してマイナスになっている、またはその見込である場合。」
「資産や資産グループが使用されている範囲や方法についてその回収可能額を著しく低下させるような変化があった、またはその見込である場合。」
「資産や資産グループが使用されている事業で経営環境が著しく悪化したか、またはその見込がある場合。」
「資産や資産グループの市場価値が著しく低下した場合」
というようになっています。現にマイナスになっていたりその可能性が高い場合を除いて、
どれも「著しく」という言葉が入っています。
相当やばそうな感じの場合のみ減損の兆候があると判断することになっているようですね。

で、この判定をクリア?して「減損の兆候がある」と判断された資産や資産グループのみ次のステップに進むことが許されます。

減損損失の認識をする

見事、減損の兆候があると判断された資産等については、第2の試練が待っています。
ここでは、「割引前の将来キャッシュフローと帳簿価額を比較」し、
本当に減損しているかどうかを判断します。
ここにいう「割引前の将来キャッシュフロー」とは、
さっきの「設例」であった毎年の収入金額と最後の処分価値を割り引かずにそのまま足したものです。
当然本来算出すべき将来キャッシュフローの現在価値よりは高い金額になってきますので、
この段階で帳簿価額を下回っているようであれば、「減損損失を認識すべきだ!」てことになります。

減損損失を測定する

ここまで、2段階の判定で落ちこぼれることなくここまで来た資産または資産グループについて、
やっと減損損失がいくらになるのか、という測定を行います。
測定方法は単純に、
「帳簿価額-回収可能額=減損損失の金額」となり、
損失の金額を控除して残った分の金額、すなわち回収可能額が新たな帳簿価額になります。
ここまできてやっと減損処理が終わりになります。
結構めんどくさいですが、ひとつひとつの資産について確かめていくよりはマシ、ということでやっていくしかないでしょう。

まとめ

とりあえず今回は「減損会計」の導入部分だけにしておいて、
次回以降で、資産グループや共用資産の減損損失についても確認していこうと思います。

また、今回確認した範囲については、財務諸表論の理論でも出題されそうなんで、
「意義」とか「目的」とかそういった部分についてもしっかりやっていかなくてはなりません。

スポンサーリンク