なんだかんだで年が明け、2018年となりました。
さて、2017年中は「不動産にかかる税金」について、
中途半端なところで終了してしまいました。
そんなわけで、新年一発目の更新は、
不動産にかかる税金の残りひとつ、
「貸し付けたとき」と「譲渡したとき」にかかる税金についてです。
関連する過去の記事は以下↓
不動産にかかる税金①~取得した時にかかるもの~
不動産にかかる税金②~保有しているときにかかるもの~
Contents
貸付、譲渡のときは所得税と住民税がかかる
前回の記事でも記載したように、
不動産を保有していると「固定資産税」や、
所在地によっては「都市計画税」を納めることになります。
で、「自分がそこに住んでいる」とか「畑にしている」というような場合には問題ありませんが、
ぜんぜん何にも使っていない、ただ税金を払い続けているだけ…
というような状況では非常にもったいないわけです。
そこで、不動産を有効活用するために、アパートを建てたり駐車場にして貸し付けたりします。
さらに、「貸し付けるよりも売ったほうが得!」という判断に至る場合もあります。
で、そういった行動に出た場合にかかってくる税金が、
「所得税」と「住民税」の2つになります。
「住民税」に関しては、所得税の申告を基に各自治体が勝手に計算してくれるものであるため、
ここでは「所得税」についてのみとり上げていこうと思います。
同じ所得税でも貸付と譲渡で違う内容
不動産を貸し付けた場合でも、譲渡してしまった場合でも、
かかってくる税金は「所得税(と、住民税)」で同じになります。
しかし、同じ所得税の中でも、
貸付と譲渡では、所得の種類が違ってくるため、
同じ金額の儲けがあったとしても、
税率の計算式や特別措置なんかがぜんぜん違うものになってきます。
また、譲渡に関しては「5年超」保有していたかどうかによって、
「短期」と「長期」に分かれており、税率も異なります。
では、以下で貸し付けたときと譲渡したときの所得について確認していきたいと思います。
不動産を貸し付けたとき:不動産所得
不動産を貸し付けたときには、
そのままの名前で「不動産所得」が発生します。
不動産所得は、他の所得と合算して総合課税される所得で、
総収入金額-必要経費で算出します。
また、不動産所得については、青色の申告書により確定申告することができます。
青色申告した場合には特別控除10万円が上記の計算式から控除されることになります。
さらに、不動産収入が「事業的規模と認められるもの」であった場合には、
ちゃんと複式簿記で記帳して、B/Sまでつけて期限内に申告した場合に、
特別控除が65万円になるチャンスがあります。
いやいや、「事業的規模」ってなんだよって話ですが、
よく言われるのは「5棟10室以上」とかいうやつです。
詳しくは国税庁のタックスアンサーにも載っていましたので、
そちらを参照するとよいと思います↓
国税庁HP 事業としての不動産貸付けとその区分
あと、不動産の貸付を行っている場合でも、
「寮みたいに食事を提供している」とか、
「いつも係りの人が作業している立体駐車場」
みたいなものについては、事業所得や雑所得となります。
また、不動産の取得に要した借入金の利子等についても、
ちょっとめんどくさいことになっています。
それ以外にもいろいろありますが、細かくなってくるためここには記載しません。
が、申し訳程度に判例のリンクの見張っておくこととします↓
国税不服審判所HP 公表裁決事例の紹介
(借入金利子のページです)
さて、不動産所得についてはこのぐらいにして、
次は「譲渡したとき」の所得についてみていきます。
不動産を譲渡したとき:短期/長期譲渡所得(分離課税)
譲渡所得には短期と長期の差がありますが、
その前に「総合課税されるか分離課税となるか」の違いがあり、
不動産や株式などは「分離課税」となっており、
収入金額-(取得費・譲渡費用)で計算されます。
で、分離課税された場合何が違うのか?というところなんですが、
まず「税率」が違います。
さっきの「不動産所得」や得ている人が多い「給与所得」なんかは総合課税される所得です。
総合課税の場合は超過累進税率によって課税されることになるため、
合計の所得金額が高くなるほど税率も高いものが適用されることになります。
一方、株や不動産の「譲渡所得」は、総合課税されるものとは”分離”され、
比例税率によって課税されることとなります。
つまり所得が低かろうが高かろうが同じ税率となるわけです。
以前、株や投資信託に適用される税率についてもすこし触れました↓
投資と税金 NISAの概要と対象の金融商品
金融資産の譲渡所得に対する比例税率は”低すぎる”というのが僕の勝手な考えですが、
不動産の譲渡所得に対してはどうなんでしょうか?
以下で短期と長期に分けてみていきたいと思います。
分離短期譲渡所得
「短期」の譲渡所得になる要件は、
不動産を譲渡した年の1月1日において、その所有期間が5年未満
であった場合となります。
この場合の税率は、
所得税30%+復興特別所得税と住民税9%
となり、合計の税額は39.63%になります。
株とかと比べるとかなり高い税率に思えますが、
これはかつてのバブル期に、「土地転がし」などといったテクが存在し、
それを不可能にするための対策である、ということを聞きました。
確かに、「居住の用に供する」とか「アパートを建てて貸し付ける」
といった場合には、そんなにすぐに売り払うことは少ないと考えられるため、
変な技が流行らないようにするための税率としては妥当かとも思います。
でも、「相続した不動産をすぐに売りたい!」場合には不利になるんじゃ…
と考えてしまいますが、相続・贈与によって取得した場合には、
その前の人の取得時期を引き継ぐことになるので大丈夫です。
分離長期譲渡所得
逆に、譲渡した年の1月1日において、所有期間が5年超である場合には、
「長期」の譲渡所得になります。
この場合の税率は、
所得税15%+復興特別所得税と住民税5%となり、
合計で20.315%の税率になります。
これは株とかの金融資産を譲渡した場合と同じ税率ですが、
5年超保有していたことを考えると、居住用などの目的で使用していた可能性が高く、
あまり高い税率で課税することは生活基盤の破壊につながりかねないと考えられることから、
この税率でも十分高いと思います。
もちろん、居住用の不動産を譲渡した場合には、
おなじみの「特例」があるため、”税金で押しつぶされて死亡”というような事態にはならないようになっています。
居住用財産の譲渡には特例がある
居住用の場合には短期でも長期でも利用できる特例や、
一定の期間以上保有していると利用できる特例があります。
特例の内容は「特別控除」であったり「軽減税率」であったりと様々ですが、
代表的なものについて次回以降の記事で記載していこうと思います。
※関連記事:居住用財産の譲渡の特例について↓
居住用財産を譲渡したときの特例①~譲渡益がある場合~
居住用財産を譲渡したときの特例②~損失が出た場合~
まとめ
不動産については、買ったとき、持っているとき、貸したとき、売ったときと、
それぞれに対して税金がかかってきます。
それらについて3回に分けてみてきましたが、
やはり貸したときや売ったとき(儲けが出ていれば)かかってくる税金が、金額的には大きくなってくるものかと思います。
とはいえ、「ただ持っているだけ」というのが一番もったいないのは確かですから、
遊休状態にしておくぐらいなら、税金がかかったとしても貸したり売ったりするほうが得なんじゃないかな、と思います。
あと、次回以降、書ききれなかった「居住用不動産の譲渡の特例」について触れていきます。