居住用財産を譲渡したときの特例②~損失が出た場合~

前回の記事に引き続き、居住用財産を譲渡したときに適用できる特例について記載していきます。
今回は「譲渡時に損失が発生した場合」の特例です。
※不動産にかかる税金については以下の記事を参照↓
不動産にかかる税金①~取得した時にかかるもの~
不動産にかかる税金②~保有しているときにかかるもの~
不動産にかかる税金③~貸付、譲渡時にかかる税金~

住み替えのために今すんでいる自宅を売却等した場合、
必ずしも利益が生じるとは限りません。
むしろ、なんやかんやで損失が発生することが多いんじゃないでしょうか。

利益が出た場合には極力税金がかからないような配慮がされているのに、
損失が出た場合には何のフォローもない、ということになると、
わざわざ損を出してまで新しい家に引っ越そうなんて思いませんよね…
そう考えると、自宅の売却時にそれが新居の取得の妨げになったり、
生活そのものに対する悪影響を与えないような配慮があるのは当然とも思えます。

では、譲渡時に税金が発生していないにもかかわらず更なる負担軽減を行う特例とは一体どんな内容のものなんでしょうか?
カギとなるのは「損益通算」と「繰越控除」という2つの措置です。
この2つは他の所得でも損失が発生した場合において、
その年や翌年以降の負担軽減措置として利用できる場合があります。
で、居住用財産の譲渡についてもこの2つが適用可能であるということです。

以下では、それらの措置を使うための2種類の特例について、
それぞれ詳しく見ていくことにします。

買換え時の譲渡損失の損益通算、繰越控除

まずは、居住用財産を買い換えた場合に損失が出た場合に適用できる特例についてです。
この特例は、譲渡によって生じた損失を他の所得と損益通算できるとともに、
損益通算してもなお損失が残っている場合には、
その金額を3年間にわたって繰り越し、
その期間の所得と相殺することが可能になります。

で、一体どんな場合にこの特例の適用を受けられるのか?
適用要件は以下になります↓

  • 譲渡の年の1月1日における所有期間が5年超であること
  • 譲渡した年の前年から翌年末までに買換え資産を取得していること
  • 買換え資産を取得した年の末日において、新居住用不動産に対しての住宅ローン残高(10年以上)があること
  • 取得した年の翌年末までに居住の用に供すること
  • 譲渡した年の合計所得が3,000万円以下であること
  • 直前(2年とか3年以内)に居住用財産の譲渡に関する特例のうち一定のものの適用を受けていないこと
  • 買換え資産の床面積が50平米以上であること
  • などとなっています。

正直、要件がたくさんありすぎて困ってしまいますが、
このなかで最も重要と考えられるのは、
「新しく取得した住宅に、住宅ローンを使っていないといけない」ということでしょう。
つまり、この特例の目的は、損を出して、さらにローンまで使って新居に引っ越した場合には、
他の所得でかかってくる税金について少しサービスしますよ、といったところでしょうか?

また、この特例を使った場合には「住宅ローン残高」が必ずあることになります。
と、いうことはつまり、所得控除よりもはるかに強力な「税額控除」である
「住宅ローン控除」の適用も同時に受けることができることになります。
住宅ローン控除だけでも所得税がほとんど発生しないような状況に持っていけるのに、
さらに残ったわずかな算出税額も、この特例の適用によって削り取られることになります。
つまり、「家をローンで買い換えて、ついでに結構な譲渡損が出たら所得税はナシかあっても僅か」ということになるでしょう。
以上から、住宅の買換えについてはかなり分厚い配慮がなされているということが見て取れます。

この特例は「買換え後の資産にローンを使った場合」に適用できるものでした。
では、逆に「ローンが残っている住宅を譲渡して損が出た場合」にはどんな特例があるのでしょうか。

特定居住用財産の譲渡損失の損益通算、繰越控除

住宅のローンは結構長いものです。
場合によってはまだローンが残っている住宅を譲渡することもあるかと思います。
で、こちらはそういった場合に適用できる特例になります。

損益通算や繰越控除の内容は買換えの場合と同じになりますが、
適用要件のひとつが「借入金の残高が残っていること」になります。
また、損益通算および繰越控除が可能な金額は、
譲渡した住居の借入金残高から譲渡対価を控除した金額
若しくは、
実際に発生した譲渡損失の金額
のうち、いずれか低い方の金額となります。

尚、この特例を適用する場合には、
「必ずしも住宅の買換えをする必要はない」ことになります。
これであれば「もう持ち家はやめて賃貸にしたい…」
というような場合にも使うことができます。

ここまでくれば自宅の売却時に損が出た場合のフォローは完全なものとなっているように思えます。

まとめ

今回は居住用不動産を譲渡して損失が生じた場合について、
2種類の特例を確認しました。

やはり、新居の購入などの「一世一代のアクション」には、
損失の発生が伴うことも覚悟しなくてはならないかと思います。
そういった場合に生じてくるダメージを極力軽減することは、
利益が出た場合に税金が邪魔にならないようにすることと同等の重要性を持つものであるのではないでしょうか。

居住用不動産の譲渡に関する特例は種類も多く、
どれがどういう状況で使えるのかわからない…
とも思いますが、
譲渡によって発生する様々な状況に対応していくためには、
このような細かい分類が必要であるということでしょう。

尚、前回と今回で紹介したもの以外にも、まだまだ特例が存在していますが、
ここでは代表的なもののみとして、残りは割愛させていただいております。