居住用財産を譲渡したときの特例①~譲渡益がある場合~

前回までの間、3回に分けて不動産にかかる税金について記載してきました。
関連する過去記事は以下↓
不動産にかかる税金①~取得した時にかかるもの~
不動産にかかる税金②~保有しているときにかかるもの~
不動産にかかる税金③~貸付、譲渡時にかかる税金~

不動産については、
「取得したとき」
「保有しているとき」
「貸付・譲渡したとき」
と、それぞれ違う種類の税金が課せられることになっています。

このうち、譲渡したときにかかる税金は、
所有期間5年未満であれば所得税と住民税合わせて39%+復興税、
所有期間5年超であれば20%+復興税
というように、短期と長期で大きく税率が変わってきます。

「長期」に該当した場合には金融資産の譲渡益と同じ税率が課税されることになりますが、
自分の住んでいた家を買い換えるにあたってそんなに税金を取られていたのでは、
「転居先に同等かそれ以上の住宅を…」と考えている場合には税金がかなり邪魔な存在になってきます。
(譲渡益が出れば、ですが)
また、「短期」に該当してしまった場合は論外です。

「自宅を売却して転居した場合には多額の税金が課せられる…」
そうなってしまうことがわかっていた場合、
多くの人はステップアップをためらい、
手狭となった古い自宅に住み続ける事を選択することでしょう。
勤務先も遠いままでしょう。
そしてそのうち、
パチンコ球が廊下を勝手に転がるなどの現象が見られるようになるでしょう。
建て替える?この場所で?嫌だわ!って感じでしょう。

じゃあ我慢するしかないんでしょうか?
そんなことはありません。
「居住用」の財産、すなわち自宅なんかを譲渡した場合には、
そこに生じる負担を軽減するための特例が無数に存在します。
今回はそれらの特例について、代表的なものを紹介していきたいと思います。

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Contents

3,000万円の特別控除

まずはもっともポピュラーな、「3,000万円の特別控除」についてです。
“まず”もなにもほとんどこれで解決してしまいそうなぐらい、
安心と信頼の制度です。
開発などで「収用」された場合を除けば最強といっても過言ではないでしょう。

で、肝心の中身ですが、
一定の要件に該当する家屋等の譲渡所得について、譲渡益を限度に3,000万円を控除する」というようなものです。
ここにいう一定の要件とは、

  • 現に居住の用に供しているか、居住の用に供さなくなってから3年を経過する年のの12月31日までに譲渡していること
  • 親戚とかに譲渡したわけではないこと
  • 前年又は前々年にこの特例やその他一定の特例の適用を受けていないこと
  • などとなっています。

上記の要件に該当していれば、短期、長期どちらに該当する場合でもこの特例を使うことができます。
ただし、「収用の特例」や「買換えの特例」とは選択適用となります。

一応適用に要件があるものの、大体大丈夫な内容ですし、
なんといっても譲渡益から3,000万円控除という金額の大きさが凄いです。
まず、「譲渡益」自体が売値から取得費と譲渡費用を差し引いたものですし、
その後さらに3,000万円引いたら普通はそんなに、というかまったく残らないんじゃないかと思います。

もちろん、この特例を使う場合には確定申告をする必要がありますが、
それさえ忘れなければほとんどこいつ単騎で何とかなるんじゃないでしょうか。

「税金がかからない」という観点からはもう十分かと思いますが、
一つだけじゃあれなんで、一応次に進みます。

長期譲渡所得の軽減税率の特例

今度は控除ではなく「軽減税率」となる特例です。
これに関してはどんな状況でも適用が受けられるわけではなく、
長期、それもただの長期ではなく譲渡した年の1月1日における所有期間が10年超の場合のみに使える特例になっています。

さらに、所有期間に加えて譲渡所得の金額にも制限があります。
「6,000万円までの部分」だそうです。
でもこれ、さっきの「3,000万円の特別控除」と併用することが可能です。
となると、売値から取得費と譲渡費用を引いて、さらに3,000万円引いて、
そこで残った部分6,000万円、ということになります。
この金額を超えてしまった人は城でも売ったんでしょうか…

で、軽減された後の税率がいくつになるのかというと、
所得税10%+復興特別所得税と住民税4%となり、
合計すると14.21%になってきます。
もちろん、6,000万円を越えた部分は普通の「長期譲渡所得」と同じ扱いになってきます。

特定居住用財産の買換えの特例

次は居住用財産の「買換え」をした場合に、課税の繰延をすることができる特例です。
この特例でも、さっきの軽減税率のときと同じように「10年超保有」の決まりがあります。
さらに、こっちは居住期間も10年超である必要があります。
この他に、譲渡したときの対価が1億円以下であることや、
新しく取得した居住用財産の床面積が50平米以上であることなどの要件があります。

この特例については、中身がちょっとややこしいため、
かなりわかりやすく紹介されている以下のページ↓を参照してください。
国税庁HP 特定のマイホームを買い換えたときの特例
国税庁HP 売った金額より少ない金額でマイホームを買い換えたとき
安定の国税庁です。2つありますが上がメインで、「制度の概要」のところに図付きで解説があります。
2つ目は特殊な例です、この場合は課税を全額繰延べることができません。
つまり、「住み替えるなら売った値段より高いとこいけよ!」ってことでしょう。

最後に、注意が必要なのはこの特例は上記の「3,000万円の特別控除」や「軽減税率」と併用することはできず、選択での適用となります。
この特例は、税金が「かからない」というわけではなく、「次の買換えに繰延べる」だけのものですので、
“逃げ切った”というわけではないことを頭に入れつつ、慎重にどっちが得か選択すべきものでしょう。

まとめ

今日は、居住用財産を譲渡して、譲渡益が出た場合について記載してきました。
正直なところ、最初の「3,000万円の特別控除」が輝きすぎて残りの2つがくすんで見えなくもないところです。
また、今回はスルーしましたが、普通に譲渡したわけではなく、「収用」された場合には、
6ヶ月以内という期限付きですが、5,000万円の控除を受けることができます。

居住用財産の譲渡益に対する特例は、金額がインフレしまくってえらいことになっています。
所得税における他の規定と比べた場合、スーパー○イヤ人みたいな数字ですが、
居住用財産の売買自体、一生に一度あるかないかぐらいの一大イベントですので、
税金が邪魔をしないよう、限界まで配慮した結果としてこんなことになったんでしょう。

そんなこんなで次回は、
「居住用財産の譲渡で損した場合」についてみていこうと思います。
損が出た場合でも特例の適用によってその他の所得を圧縮したり、その分を持ち越したりといったことができます。
実際、得する場合より損が出る場合の方が多いんじゃないかと思いますので、
ここでさらっと流さず、次回の記事一つにまとめることにしました。

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