FP2級・FP3級の試験に関しては、2018年9月試験の合格発表が行われ、ここから2019年1月試験に向けての受験申請がはじまります。
で、次で2級を受験しようとしている方も、次ではないけれどもいずれはFP2級まで合格しておきたい、と考えている方も居られるでしょうが、このブログでも何度か取り上げているとおり、FP2級の実技試験は5種類ある中から任意に選択して受験することになっています。
そして、そのうちのひとつである「個人資産相談業務(きんざい)」の合格率が、ここ数回の試験で劇的に下がっています。この課目は、日本FP協会で受験することができる「資産設計提案業務」と人気を二分するものであり、毎回多くの受験者の方が選択しているものです。
そのような課目において、もしかしたら難易度が上昇しており、合格しづらくなってしまっているおそれがあることについては、少し見過ごすことができません…
ということで今回は、そんな「個人資産相談業務」の試験について、過去のデータなどをもとにこの先どのような合格率になりそうなのか?、本当に難易度は上がっているのか?など考えていこうと思います。
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そもそも「きんざい」での受験者は合格率が低い
まず、試験の難易度や今後予想される合格率などを考えるうえでの前提として、FP2級(3級もそうですが)の試験においては、2つある試験実施団体のうち「きんざい」で受験する受験者の合格率が低く、逆にFP協会で受験する受験者の方が合格率が高い傾向にあるということです。
このことは、すべての受験者が全く同じ試験を受験する「学科試験」の合格率の差からわかります↓
★FP2級(2級FP技能検定)学科試験合格率推移
試験実施回 | 日本FP協会 | きんざい |
2018年9月 | 39.47% | 21.45% |
5月 | 42.93% | 28.24% |
1月 | 45.63% | 28.53% |
2017年9月 | 47.82% | 30.21% |
5月 | 41.44% | 24.85% |
1月 | 39.43% | 23.13% |
2016年9月 | 40.12% | 23.82% |
5月 | 38.97% | 21.85% |
1月 | 34.76% | 20.18% |
参考:日本FP協会HP・金融財政事情研究会HP
全く同一の試験でありながら、ここまで合格率が違うということは、そもそも受験者層に何か違いがあると考えてよいでしょう。
で、おそらく「きんざい」の受験者層は「日本FP協会」に比べて団体での受験申請が多く、別に合格しようと思っていない、全く勉強していないという方が多く居られることから、そういった受験者の方々が合格率を引き下げているのではないかと考えています。
ですので、実技試験に関してもきんざいの4つの課目の方が日本FP協会の「資産設計提案業務」と比べて多少合格率が低かったとしても、学科試験における合格率の乖離幅と比較したうえで、本当に難易度が高かったのか?など考える必要があるということでしょう。
個人資産相談業務の合格率の推移
では、次に肝心の「個人資産相談業務」の合格率の推移を確認していきましょう。
以下がきんざいのHPで確認できる限りの合格率です↓
★FP2級(2級FP技能検定)「個人資産相談業務」合格率推移
試験実施回 | 合格率 |
2018年9月 | 20.47% |
5月 | 23.87% |
1月 | 31.32% |
2017年9月 | 51.29% |
5月 | 34.12% |
1月 | 38.90% |
2016年9月 | 60.44% |
5月 | 17.82% |
1月 | 20.40% |
2015年9月 | 31.37% |
5月 | 48.45% |
1月 | 36.52% |
2014年9月 | 31.64% |
5月 | 33.61% |
1月 | 25.94% |
2013年9月 | 32.50% |
参考:金融財政事情研究会HP
かなり古いデータまで残っていましたが、なんと今回(2018年9月試験)よりも合格率が低い実施会もあったんですね。
で、上記の表からわかることは、「個人資産相談業務の合格率はかなり乱高下している」ということでしょう。
先程掲げた一つ前のデータ、つまり学科試験の合格率については、日本FP協会よりも低くはあるものの、過去3年間でおおよそ20%~30%の間に落ち着いていました。
しかし、きんざいにて同時に実施される実技試験の中でもっとも受験者数の多い個人資産相談業務の合格率は17.82%~60.44%と、かなり振れ幅が大きく、しかも最低値と最高値が並んで記録されているという、なんともいえない結果となっています。
直近の試験結果だけをぱっと見た場合、ずっと下落している傾向にあることから「最近難易度が上がって合格率が落ちてきている…」というように見えますが、この課目では過去にもかなり合格率が落ち込んだことがあり、逆に高いときには本当に高くなっています。
まるで「日商簿記2級」みたいな変動ですが、相対評価ではなく、ある一定の得点以上で合格できる試験であり、しかも出題形式が「事例問題の記述式」ですから、そのとき毎の試験問題によって合格率が大きく左右されることは防ぎようが無いのかもしれません。
ちなみに、FP技能検定全体としては1級はともかくとして、FP2級は全体的に難易度が低下、FP3級に関しては引き続き簡単な試験ではあるものの、多少難化傾向にあるんじゃないかと考えています。
結局は「一時的なブレ」の可能性が高い
直近のデータでは合格率が低下傾向、難易度が上昇傾向と読み取ることができる「個人資産相談業務」の試験ですが、これまでにも何度か合格率を大きく落とした例があることを考えた場合今回も「一時的なブレ」によってそうなったのであり、これからどんどん試験自体が難しくなっていくと考えるのは早計のような気がします。
よって、この先の「個人資産相談業務」の合格率がどうなってくるのか?ということについては、引き続き実施回によって高かったり低かったりを繰り返すことになると予想します。
それがいつどのようになるのか?ということについては予想を立てることはできませんが、少なくとも毎度毎度20%代前半やそれ以下の合格率になってしまうということにはならないはずです。
今後、FP2級の実技試験の選択で当該課目を選択する場合には、「かなり低い合格率」つまりは難易度が高い論点に関する出題や、問題そのものが複雑で難しいといった状況にも十分に対応できるよう、細かいところまでしっかりと押さえておくことをお勧めします。
そうすることによって、平易な問題ばかりの実施回に当たれば高確率で合格を勝ち取ることができますし、もしそうでなかったとしても十分に得点を伸ばすことが可能になるはずです。
安定を求めるなら資産設計提案業務を選択するべきかも
最後に、もし現時点でどの実技課目を受験するか決まっておらず、特に人気のある個人資産相談業務とFP協会の実施する資産設計提案業務のどちらかを受験しようと考えている方には、「合格率の安定」ということを求めているのであれば、資産設計提案業務の受験をお勧めします。
なぜならば、FP協会の実施するこの実技課目は、FP技能検定で問われる6つすべての範囲から満遍なく問題が出題され、さらには問題数も多いためか、近年は割と安定した合格率で推移しているためです↓
※日本FP協会HP・金融財政事情研究会HPより作成
※2018年9月試験の資産設計提案業務では合格率が50.52%であった
この資産設計提案業務の試験においても、上記のグラフでわかるとおり、かつてはかなり不安定な合格率となっていました。
しかし、ここ2年ほどの合格率はおよそ50%~60%の範囲で安定しており、出題者側が「どの程度の問題を作ればどのぐらいの合格率になるのか?」などといったことを過去のデータなどから理解してきているように思えます。
なお、このよーに過去のデータを生かして問題を作成するということは、当然にきんざいの方でもやっていることとは思います。しかし、個人資産相談業務をはじめとしたきんざいの実技試験に比べてかなり問題数の多い資産設計提案業務では、こういった部分の調整などがしやすく、それが合格率の安定につながっているのではないかと考えます。
このことから、ある程度安定した、実施回によってバラつきの無い合格率・難易度を求めているのであれば、日本FP協会に実施する「資産設計提案業務」を選択するべきであるといえるのではないでしょうか?
まとめ
今回はFP2級(2級FP技能検定)のうち、最近の試験で合格率が低下してきている「個人資産相談業務」について、実際にはどうなの?的な部分を確認してきました。
FP2級の試験はそれなりの勉強時間を確保することができれば、ゼロから勉強を開始しても確実に独学で合格することができる試験です。
しかし、独学で勉強を進めることになると、実技試験の課目選択やその他勉強の方法など、様々なことで迷ってしまうことになるのも事実でしょう。
迷ったときにどうするべきか?最終的には自分で判断することにはなりますが、その前にネットなどで出ている情報をいろいろと集め、その判断に根拠を持たせるようにすると、自信を持って試験対策を進めていくことができるようになるのではないでしょうか?