財務諸表論試験対策「資産除去債務はなぜ資産負債の両建処理?」

来年の税理士試験に向けて財務諸表論の理論問題に係る試験対策を進めています。とはいえ、現在のところは基本、というか初歩的な部分のみでして、年内ぐらいはそのぐらいの感じで進めていこうと思っています。

ただ、「基本的な論点」といっても、個別にはちょっと知っていたけれども、「他の論点のこの部分と比較してどうか?」みたいな感じのものになってきますと、著と解説をしっかり読んだりしないと理解ができない…というようなものも存在します。

で、実際の試験では、そのように「ただ読んだことがあって知っているだけ」では通用せず、いろいろと深く理解しており、かつその知識を応用して解答しなくてはならない問題が出題される、というかそういった問題の方が多いんじゃないかと考えています。

そこで、今後は「初歩的な内容でも他の論点との絡みで発展する可能性があるようなもの」については、見つけ次第ノートなどに書き写しておき、あとでこのブログを用いて備忘録的な記事にまとめるなどして、細かい内容まできっちり押さえるための対策をしていこうと思っています。

そして、今回は何気なく「資産除去債務」の練習問題的なものを見ていたときに発見した、「資産除去債務(資産負債の両建処理)」と「退職給付債務(引当金処理)」についての比較問題から、なぜ資産除去債務は両建処理になったのか?その経緯などを確認していきます。

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Contents

退職給付債務は引当金なのに資産除去債務は両建処理

まずは財務諸表論における「資産除去債務」の会計処理の処理方法に関する確認です。といってもこれは簿記論の試験対策でもさんざん練習問題などで出てきたのですが、「資産と負債の両建処理」をしていくことになります。

ざっくり言うと、固定資産の取得や開発などの時に、その金額を取得価額に加え、同額を「資産除去債務」として負債計上していき、そこから一定の割引率で徐々に割戻していき、最終的な除去サービス等に要する費用に近づけていくという方法でした。

で、資産除去債務ではこのような方法を取ることが決まっているのですが、この方法が、退職給付債務で取られる「引当金処理」と比較されて出題されている理論の練習問題がありました。

そこでは「負債性に関して」という感じでの出題でしたが、確かに実際の支出は将来であるものを今のうちに把握しておかなくてはならない、という点でこの2つの会計処理は似ていると言えるのではないでしょうか?まだこのあたりの深い部分はよくわかりませんが…

そうすると、なんで資産除去債務は引当金処理ではなく「資産負債の両建」という方法を採用したのか?このあたりが疑問になってきますし、財務諸表論の本試験でも理論問題で詳しく問われることもありそうです。

以下、そのあたりのことについて会計基準などをもとに確認してみました。

会計基準の設定時にも議論があった模様

資産除去債務は「資産負債の両建処理をする」ということは「企業会計基準第18号 資産除去債務に関する会計基準」によって以下のようなかたちで定められています↓

資産除去債務に対応する除去費用の資産計上と費用配分

資産除去債務に対応する除去費用は、資産除去債務を負債として計上した時に、当該負債の計上額と同額を、関連する有形固定資産の帳簿価額に加える。(以下略)

参考:企業会計基準第18号「資産除去債務に関する会計基準」(第7項)

で、上記の結論に至るまでの背景には、引当金処理をすることにしてはどうか?という意見があったようで、それに関する記載もありました。

そこでは、引当金処理によった場合、有形固定資産の除去に要する費用がその使用に応じて各期間に適切に配分されるという点で資産負債の両建処理によった場合と同じであり、両建処理にで計上される借方項目(つまり固定資産の取得原価が増える分でしょうか?)、が本当に資産性を有しているのかどうかという指摘のもと、引当金処理を採用して、除去債務の金額を注記しておくのが良いのではないか?という意見があったとされています。

しかし、引当金処理によった場合では「有形固定資産の除去に必要な金額が貸借対照表に計上されない」という意見があり、結果として「資産負債の両建処理」という結果に至ることになったようです。

確かに、引当金処理では「その期に発生した費用分」を徐々に貸借対照表に計上していくことになるわけですから、有形固定資産の除去に要する費用の全額は、最後までそこには出てこないということになります。

これだと財務諸表を見る側に親切な表示とは言えなそうですね…

両建処理は「引当金処理を包摂するもの」

では、資産負債の両建処理を行うことで、意見が上がっていた引当金処理と比べて、どのようなプラスの効果があるというのでしょうか?

まず、先程の引当金処理が採用されなかった理由である「除去に必要な費用の計上が不十分」という点においては、資産夫妻の両建処理によった場合、その有形固定資産の取得等の時に「付随して不可避的に生じる除去サービス」の債務を負債として計上することになり、これにより貸借対照表上で将来必ず支払う除去費用が確認できることになります。

さらに、除去費用と同額を取得原価に含めることによるメリットも指摘されていました↓

…対応する除去費用をその取得原価に含めることで、当該有形固定資産への投資について回収すべき額を引き上げることを意味する。この結果、有形固定資産に対応する除去費用が、減価償却を通じて、当該有形固定資産の使用に応じて各期間に費用配分されるため、資産負債の両建処理は引当金処理を包摂するものといえる…

参考:企業会計基準第18号「資産除去債務に関する会計基準」(第34項)

つまり、資産負債の両建処理における「資産」の部分である取得原価に加えられる金額が、減価償却によって各期間に費用配分されることによって、先程の引当金処理で指摘されていた「除去に要する費用が使用によって各期間に配分される」というメリットを持っているということになります。

そうすると、資産除去債務の負債計上が十分にでき、かつその費用を固定資産の使用に応じて各期間に配分することができる「資産負債の両建処理」が、この資産除去債務の会計処理に最も適した処理方法である、ということになるでしょう。

これでようやく、なぜ資産除去債務は退職給付債務のように引当金処理によらず、氏s何負債の両建処理をするのか?ということがわかりました。

財務諸表論の本試験でも、理論問題ではこういった細かい「結論の背景」みたいなところまで押さえておく必要がありそうですね…

まとめ

今回は税理士試験の財務諸表論で出題される「資産除去債務」に関して、理論的な部分を少し確認してきました。

簿記論の試験対策では、「資産除去債務は両建処理」という前提のもと問題を解いたり内容を確認したりしてました。しかし今後、財務諸表論の試験対策をしていくにあたっては「なぜそのような処理をすることになったのか?」ということについても考えていく必要がありそうです。

これから先、簿記論と財務諸表論を並行して勉強していくことになりますが、それぞれの範囲について、「処理方法は知っているけれどどうしてその処理をするのかわからない」という部分は多くあるはずです。

それらについて、法規集などを用いて細かい部分、先程述べた「結論の背景」的なところまでしっかり確認することで、財務諸表論の本試験での、意味のわからない理論問題にも対応できるようになってくるのでは?といったところです。

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