現在、10月に実施される宅建試験の試験対策をしています。とはいえ、勉強を始めたのが8月7日の税理士試験(簿記論・財務諸表論)の受験を終えてから、というなんともスローなスタートであったため、未だ全部の範囲を確認し終えることができていません…
なんとか8月中にはテキストを1周し、ひと通りの範囲を見ておきたいとは思っていますが、やはりこの間から勉強している「権利関係」の範囲がかなりなじみの無い内容であり、かなり時間を食っている、という状況です。
で、今回はそんな宅建試験の「権利関係」範囲の中から、普段よく聞くもののその内容について(法律的に)詳しくは知らなかった「時効」についての確認をしていきたいと思います。
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そもそも「時効」とは?
かなり前になりますが、一定の事件に関して「時効」が無くなる、みたいなのをニュースでやっていました。僕の事項に関する知識はこれだけだったんですが、これは多分刑法に関しての時効の話をしているんじゃないかと思います(よくわかりませんが)。
しかし、宅建試験で出題される「時効」は、どう考えても民法におけるそれでしょうから、今回は「e‐Gov法令検索」を用いてちょっと事項について調べてみました。
結果、大した情報は得られなかったものの、民法では第7章として、144条あたりから事項について書かれていました。
ここには「時効」についての用語説明が無かったため、改めて辞書で引いたところ、時効という言葉には以下の意味があるとのことでした。
時効
占有、権利の不行使といった事実状態が一定の期間継続した場合に、この事実状態が真実の権利関係に合致するものかを問わないで、これを尊重し権利関係を認めようとする民事法上の制度。
権利取得の効果を生ずる取得時効と権利消滅の効果を生ずる消滅時効とがある。参考:金森 久雄・荒 憲治郎・森口 親司 編(2008)「経済辞典」500頁 有斐閣
法律ではなく経済の辞典で調べましたが、「民事法上の…」というフレーズがあるためこれで合っているのかと思います。
で、ここで大切になりそうなのが上記引用のうち2つ目の文章の、”取得時効と消滅時効がある”という部分ではないかと思います。宅建試験のテキストにおいてもこの2つの時効に分けて解説がなされていました。
よって、ここからは「取得時効」と「消滅時効」についてそれぞれその期間などについて確認していこうと思います。
取得時効
宅建の試験で出題される取得時効は、「ある物件で他人の所有しているものを一定期間占有していれば時効により自分のものになる」といった内容のものになるようです。
「他人の所有する土地を占有している」という状況がまず想像できませんが、おそらくかなり昔から住んでいて、もはや所有者が誰だかわからないような田舎の土地とかでは起こりえることなのかもしれません。
では、一体どのぐらいの期間「他人の土地を占有」していれば時効によりそれを手に入れることができるんでしょうか?これに関して民法の条文では以下のような記載がありました↓
民法第百六十二条 所有権の取得時効
二十年間、所有の意思を持って、平穏に、かつ、公然と他人のものを占有した者は、その所有権を取得する。
2.十年間、所有の意思を持って、平穏に、かつ、公然と他人のものを占有した者は、その占有の開始の時に、善意であり、かつ、過失が無かったときは、その所有権を取得する。
参考:e‐Gov 法令検索
民法では、善意(他人のものだと知らなかった)・善意でない(他人のものだと知っていた)に関わらず、「平穏に・公然と」そして「所有の意思を持って」他人のものを占有していた場合に、取得時効によってその所有権を取得することができることになっています。
つまり、宅建試験では「占有者に所有の意思があったかどうか」のタイプのひっかけ問題がでてこないとも限らないため、「借りてただけ」とかそういった感じの文章が問題文に登場しないかどうか、きっちり確認しておきたいところです。
そのうえで、善意の場合は10年間、善意で過失が無い無い場合は20年間、占有していた期間があれば取得時効が完成するということになっています↓
取得時効の完成までの期間
善意かどうか | 時効までの占有期間 |
善意無過失 | 10年間 |
善意でない(悪意・有過失) | 20年間 |
そして、この取得時効によって所有権を得た場合には、その時効のカウントをスタートした日にさかのぼって所有権があったことになる、とのことで、時効が完成した日の取得ではないことに注意しなくてはならなそうです。
また、宅建試験での上記以外の取得時効に関する論点としてテキストに記載されていたものもありましたが、「法令検索」にはなさそうな感じでしたので、おそらく判例などによるものかと思われます。
以下、テキストに記載があった事項を列挙しておきます↓
取得時効に関する論点
- 占有開始時に「善意無過失」であれば、途中で他人のものだと気がついた場合でも取得時効は10年
- 占有者が途中で変わった場合でも新たな占有者は前の占有者との所有期間を合算して時効までの期間を計算できる
- 占有されている土地の所有者が変わった場合、それが時効の完成前なら占有者は時効の完成時にその所有権を主張できるが、時効完成後であった場合は「先に登記したほうが勝ち」となる
参考:きんざい(2018)「FP・金融機関職員のための宅建合格テキスト」
おそらく宅建試験の本試験では、上記のような「○○の場合」という条件がついた事例で出題されることが予想できますので、ひとつひとつしっかり覚えておく必要がありそうです。
消滅時効
続いて「消滅時効」についてです。こちらは借金をしていても一定期間が経過してしまえばそれ自体が無かったことになる、という感じの時効のようで、先の取得時効が期間の経過で権利が発生するのに対し、こちらは「権利が消滅してしまう」ということになっています。
で、民法ではこの消滅時効について以下のような記載がありました↓
民法第百六十七条 債権等の消滅時効
債権は、十年間行使しないときは、消滅する
2.債権または所有権以外の財産権は、二十年間行使しないときは、消滅する
参考:e‐Gov 法令検索
こちらも「10年」と「20年」に分かれていますが、一般的な債権については10年行使しない場合に消滅、”所有権以外”の財産権については20年で消滅、という分かれ方をしています。
なお、「所有権」については宅建のテキストでも記載がありましたが、さすがに事項で自分のものではなくなってしまうことは無い、つまり消滅はしないとのことでした。当たり前すぎる内容ですが、本試験でさらっと引っ掛けてきそうなので注意したいところです。
では、消滅時効までの期間をカウントするスタート地点はどこになっているのでしょうか?こちらも民法の条文に記載がありました↓
民法第百六十六条 消滅時効の進行等
消滅時効は、権利を行使することができるときから進行する
2.(略)
参考:e‐Gov 法令検索
つまり、何年の何月何日までに払う、というときにはその期限が到来した日、期限が無くてもそれ以外の条件達成時に支払うなどというときにはその条件達成の日から起算して10年または20年ということになるわけですね。
で、この消滅時効があることによって、借金を返さない、代金を支払わないなどといった場合にも時間の経過で権利を主張することができなくなってしまう恐れがあります。
しかし、何度督促しても頑なに支払を拒否する相手がいた場合、このままでは債権者側が毎度泣き寝入りをしなくてはならないことになってしまいます。
そのため、時効にはその期間の経過を中断させる効果を持つ一定のアクションが存在しているようです。以下、それらについても確認していきます。
時効が中断される場合
時効が存在することにより、一定の期間が過ぎると何かを取得できたり、権利が消滅してしまったりすることはわかりました。しかし先程も述べたように、どうあっても時効の期間さえ過ぎてしまえば支払わなくて良い、返さなくて良い、と考える輩が現れることにより、権利者が大変な損をするという事態が生じかねません。
それに対応するためなのかはわかりませんが、時効にはその進行を中断させる一定のアクションが存在しているようです。それが「請求」と「承認」の2つであるということなので、以下、時効を中断させる2つのアクションについて確認していこうと思います。
債権者からの請求
債権者から債務者に対して「請求」が行われたときには時効が中断することになっているようです。
ただ、この場合における「請求」とは、裁判での請求でなくてはならず、裁判によらず口頭などで請求しただけでは、そこから6ヶ月以内に改めて裁判を起こす必要があるとのこと。
で、この裁判で勝った際には時効が中断されることになるわけですね。ちなみに「口頭で請求⇒裁判で勝訴」となった場合には、口頭で請求した時をもって時効の中断、ということになるようです。ここも宅建試験では引っ掛けてきそうな予感です…
債務者による承認
次に、債務者側からの「承認」がなされたことによる時効の中断についてです。
承認については請求の場合と異なり、債務者が債務者であることを自ら認めているわけですから、別に裁判に訴えるほどのことではなく、口頭での承認も時効の中断要件になるようです。
「請求⇒裁判のみ・承認⇒口頭でも可」という点をしっかり覚えておきたいところです。
最後に
とりあえず今回は宅建試験で出題される「権利関係」の範囲のうち、時効についてまとめてみました。
権利関係の範囲に関しては、現時点ではこれ以外にも「制限行為能力者」などのあたりでかなりごちゃごちゃしてしまってわかりにくい…と感じていますので、それについて、またこれから試験対策を進めていってそのような論点が出てきた場合には、新たに記事としてまとめていこうと思います。