なぜ日商簿記2級はそんなに難易度が高いのか?

2019年の2月に実施された「日商簿記2級」の試験で、一部凶悪な問題が出題されていたという話を耳にしました。詳しく見たわけではありませんが、どうも「連結会計」の問題で、連結子会社が2つあったとか無かったとかそんな話でした。

正直、今回はそのような話がふと入ってきただけで、これまでにも合格率の低かった、というか難易度が高かった実施回ではそのような「奇問・難問」がしょっちゅう出題されていたことでしょう。

しかし、それにしても様々な資格・検定がある中で「2級なのにここまで難易度が高い」というものは珍しいのではないでしょうか?一部、建築士などは2級でも難しいようですが、日商簿記2級はそういった感じのものではなく、高校生なども受験する”一般的な検定”のはずです。

今回は、そんな日商簿記2級の試験について、なぜそんなに難易度が高いのか?難しいと考えられているのか?など、いろいろと考えていこうと思います。

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日商簿記2級の難易度は高校卒業程度?

まず、大体の資格や検定で一般的にいえそうなことは「2級」となっているものに関してはその難易度が「高校卒業程度」であると考えてよいのではないかと思います。また、場合によっては「この級は高校卒業程度のレベルです」と謳っている検定等もあります。

そうなってくると、この「日商簿記2級」の資格(検定)についても、それに合格した場合には「簿記に関して高校卒業程度の知識・能力を有している」と証明できるものであるように思えます。

もし、検定を実施している商工会議所がそのような考えを持っていなかったとしても、簿記に関して特に勉強したことがない方々にとっては、「2級を持っているのであればそのぐらいの知識水準なのか…」ととられるのではないでしょうか?

しかし、実際にはこの日商簿記2級の試験はかなり難易度が高く、実施回によっては合格率が10%台前半などと、難関試験並みとなってしまっている場合もあります。

また、「高校卒業程度」と考えた場合に比較対象となるのが、全国の商業高校生が受験する「全商簿記」の試験ですが、日商簿記2級はその「1級」の試験と比べても普通に難しいようで、一般的には「全商簿記1級合格⇒日商簿記2級にチャレンジ」といった流れになるのでしょう。

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もちろん、これは高校生が受験する場合の話ですが、もし、日商簿記2級を”大人”が受けようと考えた場合でも、その難易度は「ちょっと受験してみようかな~」と考える他の資格と比べてかなり高いといえそうです。

実際、同じ”2級”の試験である「FP2級」と比較しても難しいはずですし、割りと難易度が高いと考えられる「宅建試験」と比較しても、そこまで劣るものではなく、場合によっては日商簿記2級の方が難しかったと感じる方も居られるはずです。

そう考えると、この「日商簿記2級」という資格に関しては、「”2級”だから高校卒業程度」と考えるのはちょっとどうかな…といったところです。僕が当該試験を受験した際にも、受験者の半分かそんなもんが高校生だったはずですが、正直アレは高校生にはちょっと難しいかもしれません。

難易度が高い問題が出題されればその分合格率も下がる仕組み

また、日商簿記2級の試験はその合否の判定方法が「100点満点中70点以上の得点」ということになっています。

これにより、問題自体が非常に難しい実施回においては、得点が全受験者数のかなり上位に入っていたとしても「合格基準点」を上回ることができなくて不合格になってしまうようなことも考えられます。

そういった理由により、日商簿記2級の試験はかなり合格率にばらつきがあり、「難しい問題」が出てきた回の合格率はかなり低いものになってしまいます。もちろん、そのような出題がなかった場合には、「みんな解ける⇒合格率も高い」という結果になります。

そして、あまりにも合格率が低かったとか、今回(2019年2月)のように異常な内容の問題が出題されたという場合には、その回の受験者だけでなく、今後受験を検討している方、また、過去に受験した方なども巻き込んでちょっとした話題になるような感じでしょうか?

そのなかで、「これから受験する方」は「本試験でこんな問題が出た」と身構えることになってしまい、結果として日商簿記2級の試験は難易度が高いという考えになってくるのではないかと思います。

まぁ、そのような問題が出る時点で「実際に難しい試験である」というのが現状なんでしょうが、やはり一部のヤバい出題がクローズアップされ、受験者にとっての試験のイメージが変化している部分も”多少は”あるかもしれません。

とはいえ、この試験は固定された合格基準点を超えるか否かで合否が決まってくる試験であるため、毎度毎度異常に合格率のブレがあり、低いときには難関資格並みになっているようなこともあります。

自分が受験した回でそのような試験問題にあたってしまう確率を考えると、全体的に見て「2級としてはおかしいぐらいに難しい試験である傾向が強い」と考えるのが妥当でしょう。

試験範囲の改定もあったが結局は「問題自体の難易度」か?

ではなぜ、日商簿記2級の試験はここまで難易度が高いのでしょうか?

2016年にその試験範囲が大幅に改定され、「難しくなった」とされる面もありますが、実際にはそれ以前より合格率は安定せず、改定前と改定後でそこまで目立った違いはないようにも思えます。

日商簿記 出題範囲改正で難化した?合格率は?
FP2級の試験が終わって以来、簿記について記事を書くことが多くなってきました。と、いっても今目指しているのは「税理士試験」の簿記論であって、...

もちろん、それまで「1級」の範囲であったものがいくつも2級に降りてきて、その中には今回問題?になった連結会計も含まれているのですが、どの範囲であっても「難問」を作ることは可能であり、合格率の低い回は試験範囲どうこうではなく、「明らかに無理」な出題があるのではないでしょうか?

そうなると、出題範囲に含まれるひとつひとつの論点について「より深い」知識を得ていかなくてはならないことになり、その分合格までに必要な勉強時間も跳ね上がるといえそうです。

もし、「この論点については日商簿記2級で難解な出題がされ易い」というようなことがわかりさえすれば、効率よく勉強して”そこだけ”を固めていけばよいはずです。また、この範囲でコレが出たらとりあえずパスして次の問題へ、などと考えることも可能です。どこの範囲から勉強していくか?などの試験対策の効率的にもそれを知っていればかなり有利なのかもしれません。

実際、日商簿記2級と難易度について比較しがちな「宅建試験」では、一部の範囲で難しい問題が出題され易く、非常に厄介であることがわかっています。

しかし、日商簿記2級の試験においては専用の試験対策講座を受講するなどしない限り、また、そうしたとしてもそのような情報を完全に把握していくというのは困難なことかと思います。よって、合格のためには出題の可能性がある全ての範囲・論点についてかなりレベルの高い問題までクリアできるようにしておく必要がありそうです。

このあたりが、日商簿記2級の試験が他の資格試験の「2級」、つまりは高校卒業程度のものと比べて難易度が高く、合格までに必要な勉強時間も長くなってしまう要因ではないでしょうか?

とにかく、この試験に関しては「問題の難易度が高すぎる」といえそうです。

問題量が多いことも難易度の高さに繋がっているはず

日商簿記2級はまた、試験問題の「難しさ」だけでなく「問題量の多さ」により、時間内にすべての問題を解き終えることができない場合があることも、その難易度の高さの原因となっているはずです。

日商簿記検定はそれぞれの問題ごとに計算を要し、記述式で解答しなくてはなりません。このタイプの資格試験では、マークシート形式などのものと比べて「タイムオーバー」になってしまう可能性が高いのは明らかです。

そのような形式の問題を大問で5つ解いていかなくてはならないうえ、仕訳問題で字を書く量が多かったり、清算表がごちゃごちゃしていたりで「どう考えても全部は解ききれない問題量」という実施回もかなり多いでしょう。

そしてそこからさらに問題自体が難しいとなると「難しい(解けない)⇒時間もない⇒焦ってミスをする」というような流れで、冷静になれば解けるような問題ですら失点してしまうようなことが考えられます。

この「問題量が多く時間内に完答できない」というのは、日商簿記2級の難易度が(時として)異常に高いことの原因としては「問題自体の難しさ」と比べて小さいものかもしれません。

しかし、「難問・奇問」との連係プレーにより受験者の足を引っ張る要素となっていることは間違いありません。

商工会議所は「日商簿記2級」の資格の価値を高めたい?

また、これに関しては実際に聞いたわけでもないのでなんともいえないのですが、試験実施団体である商工会議所が、あえて難易度を上げ、合格率を下げているのではないのか?ということも感じます。

日商簿記2級が合格率の低い、つまり難易度が高い試験であると世間に認知されれば、その資格自体の価値が認められ、保有者が様々な場面で有利になってくる、ということがありえるためです。

もちろん、日商簿記2級の保有者は巷にあふれかえっているわけですから、そんなに簡単に「この資格は難しい」と思わせるようなことはできないはずです。

しかし、長期間にわたって慢性的に合格率を絞ったり、ちょっとした話題になるような「難易度の高い問題」を出題していけば、そのうち「簿記2級」という資格のイメージがそのようなものになってくるかもしれません。

そのようなことのために試験実施団体がここまでするかどうか?問い雨天にはちょっと疑問が残りますが、やはり「日商簿記2級の価値」というものを意識して、ある程度難しい試験にしていくという面もあるのではないかと考えてしまいます。

合格率の高い「当たり回」を待つ他なさそう

最後に、「2級としては異常に難易度が高い」といえる日商簿記2級の試験をどのように攻略していくべきなのか?ということについて考えたいと思います。

しかし、これといった具体的な対応策はなく、ひたすらに「難しい設問にも対応できるように問題演習を重ねていく」ということを続けていく他ないのでは?と思います。

そして、この試験は「年3回(2月・6月・11月)」に実施されているものですから、比較的難易度の低い問題ばかりで構成された「当たり回」にヒットするまで、諦めずに受験し続けるということも大切なのではないでしょうか?

日商簿記2級の試験は固定の合格基準点方式ですから、毎回の合格率にブレがあるのは先程述べたとおりです。そうなると、問題が簡単で合格率も高くなる実施回が絶対にあるはずで、もし、最初の受験が「ハズレ」で散々な結果に終わったとしても気にする必要はないかと思います。

とにかく、一度や二度不合格になったぐらいではめげずに、次の試験までの間きっちりと試験対策を続けていけば、最終的には合格に辿り着くはずです。

また、長い期間の試験対策により、通常であれば「難易度が高い」とされるような試験問題の回にも合格できる可能性があります。「ハズレ回」といっても”合格者ゼロ”というわけではありませんから…

※2019年6月追記※

第152回の日商簿記2級を受験された皆様、お疲れ様でした。現時点で今回の試験については騒ぎになっているというようなこともなく、前回理不尽な目に遭った受験者の方の中にはようやく合格を手にできそうでホッとしている、という方も多いのではないでしょうか。

また、今回の試験は受験していない、または簿記3級の試験を受験し、次の第153回(2019年11月試験)で簿記2級にチャレンジしようと考えている方もいらっしゃるでしょう。

そして、「今回の試験は割と難易度が低かったようだから次はまた異常に難しくなるのでは?」と考えてしまうようなこともあるかもしれません。しかし、日商簿記2級の試験の「アタリ/ハズレ」には特に法則はないはずです。今はあまり気にせず、なるべく早く試験対策を始め、確実に合格ラインを超えられるよう勉強していくべきでしょう。

まとめ

今回は、”2級”の試験なのになぜか難しすぎる「日商簿記2級」について考えてみました。いろいろな理由があるとは思いますが、他の試験の「2級」と比べて難易度が高く、取得し辛いものであることは間違いないでしょう。

この試験は「民間の検定」ではありますが、認知度も高く”使える”とされるものであるため、これから受験しようと考えている方はかなり多いのではないかと思います。

毎回の合格率に大きな差があり、ダメなところに当たってしまうとかなり苦戦する試験であるとは思いますが、連続で受験していけばいつかは「当たり回」に遭遇するはずです。もし、一度受験してダメでも、合格できるまで何度も受験していくことをお勧めします。

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