宅建試験の対策を進めるにあたって、「権利関係」の範囲は以前の記事でも述べたとおり”日常生活であまりかかわりの無い論点”が多く、非常に苦労させられています。
そんな中でも特に自分にとってかかわりが無いと感じるのが「制限行為能力者」が行った行為に関するものです。なにせ自分が未成年だったのははるか昔、現在ではどんな意思決定をしたとしてもそれは自分によるものであり、その結果は自分に返ってくることになります。
しかし、場合によっては未成年者のみでなく、一定の場合にも「法律的な行為を行うのが困難」と考えられる場合には、「制限行為能力者」となり、その方が行った法律行為については一部制約が伴う可能性があるとのこと。
宅建の試験対策をしていると、この制限行為能力者が行った契約等に関しての事例等がテキストにいくつか見受けられます。
しかしながら、制限行為能力者の分類や、それぞれの行為にかかる制約など、ちょっと覚えづらいと感じるのも事実です。そこで今回は、それらをちゃんと覚えるという意味も兼ねて、宅建試験対策上の「制限行為能力者」について確認していこうと思います。
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制限行為能力者は4種類ある
宅建の試験、というかその他の法律系の資格であっても同じ内容なのかとは思いますが、ここで出題される「制限行為能力者」つまり法律行為を行う能力が欠如しているか、または十分に備わっていないと認められる場合の分類には4種類(4段階)があるようです。
そのうちひとつは「未成年者」となりますが、これも僕のような素人が知っている「未成年者」ではなく、法律的に定められた要件を満たす方が該当することになるようです。
それ以外の3つについては、それぞれの「事理を弁識する能力」の程度によって分類されているようです。
どのような状況でどの制限行為能力者に分類されるのか?などについては専門家ではないためよくわかりませんが、とりあえずは上記4つの分類の”定義”について確認しておこうと思います。
制限行為能力者の種別 | どのような場合に該当するか |
未成年者 | 20歳未満で”婚姻していない”者 |
成年被後見人 | 精神上の障害で事理を弁識する能力が無く、裁判所から貢献開始の審判を受けた者 |
被保佐人 | 同じく事理を弁識する能力が”著しく不十分”で、補佐開始の審判を受けた者 |
被補助人 | 事理を弁識する能力が”不十分”で、補助開始の審判を受けた者 |
「未成年者」以外についてはほぼ似通った内容になっており、被後見人⇒被保佐人⇒被補助人の順で「事理を弁識する能力」が高くなっていくようです。
なお、俗にいう「未成年者」であっても結婚している場合にはここでは未成年者として扱うことにはならないので注意しておく必要がありそうです。
それぞれの行った法律行為に関する制約
では、それぞれに分類される「制限行為能力者」が行う行為に関する制約について確認しておきます。
未成年者
親権者や親権者がいない場合の後見人の同意を得ないで行った法律行為については、一定の場合を除いてこれを「取り消す」ことができる。
被後見人
成年被後見人が行った法律行為は日用品の購入などのものを除いて「取り消す」ことができる。
被保佐人
被保佐人が保佐人の同意を得ないで行った以下の行為は「取り消す」ことができる↓
- 元本を領収し、または利用すること
- 借財または保証をすること
- 不動産その他重要な財産に関する権利の得喪を目的とする行為
- 訴訟行為
- 贈与、和解または仲裁合意
- 相続の承認若しくは放棄または遺産の分割
- 贈与の申し込みの拒絶、遺贈の放棄など
- 新築、改築、増築または大修繕
- 第六百二条に定める期間を超える賃貸借
⇒土地の賃貸借:5年・建物の賃貸借3年 他
参考:民法第十三条・第六百二条
被補助人
被補助人が補助人の同意無しに行った「重要な」法律行為のうち、裁判所が補助人の同意を必要とすることを認めた特定の行為についてのみ「取り消す」ことができる。
制限行為能力者の「保護者」が有する権限
次に、制限行為能力者の「保護者」になっている人が有する権限について認していきます。
保護者が有する権限は「代理権」「同意権」「追認権」「取消権」と、全部で4種類あり、制限行為能力者の種別ごとに、保護者が有する権限もかわってくるようです。
今回は、4つの権限ごと、どのタイプの保護者がどの権限を有しているのか見ていこうと思います。
代理権
保護者が代理権を持つのは「未成年者」と「成年被後見人」になります。未成年者はともかく、成年被後見人についてもかなり症状が重く、その行為について理解できない恐れがあるため、保護者が「代理」として法律行為を行うことになるようです。
同意権
保護者が同意権を持つのは、「未成年者」「被保佐人」「被補助人」の3種類であるとのことです。成年被後見人についてのみ保護者の同意権が無いと言うことになりますが、宅建のテキストによれば、契約等に付き保護者が代理して行うことになるため、同意権は意味を成さないためである、とのことでした。
追認権
追認権は「すべての制限行為能力者」の保護者が有している権限になります。これは、制限行為能力者が一人で行った契約等を追認することになり、保護者としてその契約の有効性を認めている、ということになるようで、この「追認」を行った時点でその法律行為を「取り消す」ことはできなくなるようです。
取消権
取消権についても「すべての場合の保護者」が持っている権限ということになります。この取消権を行使すると、「契約はなかったものとする」ことができ、また、保護者だけでなく制限行為能力者本人についても取り消しの権限を有しているとのことです。
単独で(保護者の同意なしに)できる行為もある
ここまで、制限行為能力者の分類とその保護者の権限について確認してきましたが、なにも制限行為能力者だからといってあらゆることが保護者の同意無しにはできないというわけではないようです。
例えば、成年被後見人であっても日用品の購入などについては自分の意思ですることが可能(保護者が取り消せない)ですし、未成年者についても小遣いなどを自分の意思で処分することが可能です。
また、比較的症状が軽い「被保佐人」や「被補助人」についてはかなりの範囲で、単独での法律行為が可能になっているようです。
これらについても、宅建試験の本試験では「引っ掛け問題」などで出題されてきそうな予感ですので、またしっかりと確認しておきたいと思います。
まとめ
今回は、宅建試験の範囲である「制限行為能力者」について、その法律行為にかかる制限と、保護者の権限について確認しました。
正直、これが本試験でどんな出題のされ方をするのかについてはまだよくわかっていませんが、問題集を進めていくうちに新たに覚えなくてはならないようなところがでてくるものかと思いますので、そのときは新たにまとめなおすことがあるかもしれません。