本支店会計についての論点は、簿記の試験で出題されるもののなかでも問題自体が長かったり、計算量の多さや未達取引の処理なんかに時間を取られるなど、あまり良いイメージはありません。
この間の記事ではそんな本支店会計のうち「在外支店がある場合」について確認しました。なんというかもともとややこしい本支店会計の最終形態みたいなとこですね。
※本支店会計、在外支店がある場合の処理については以下の記事から↓
しかし本支店会計について需要があるのは「日商簿記2級」でも問われる可能性がある、基本的な部分についてなのかもしれない…と思ったため、今回の記事では「本支店会計の基本的な処理」について、自分の確認も含めて記載していこうと思います。
※日商簿記2級の出題範囲については以下の記事から↓
Contents
簿記試験対策上の本支店会計とは
簿記の試験においての本支店会計は、企業に本店と支店が存在する場合で、支店を独立の会計単位として本店とは別に帳簿をつけている(支店独立会計制度)ことを前提として、本店と支店の間での取引によって生じた「内部利益」などの控除によって、合併した財務諸表が適切なものになるようにしていく処理、といったところでしょうか?
問題の流れとしてはまず「本支店間の取引」があって、「未達取引」の処理をして、それが終わったら個別に決算整理をして、最後に合併した財務諸表を作るみたいな感じになってくるんじゃないかと思います。
この後、その「本支店会計の処理」の流れに沿って、やり方や使用する勘定科目などを確認していきます。
本支店間の取引の仕訳をする
本店と支店の間で取引を行った場合、普通の簿記でやる仕訳の間に「本店」や「支店」または「本店仕入」や「支店向売上」などの科目を挟み込むことによって、本店や支店が介在した取引を表現できるようになります。
では、具体的な例で確認していきましょう
例)本店は支店に現金100円を送金した
本店側の仕訳
支店 100 現金 100 支店側の仕訳
現金 100 本店 100
この例の取引では、企業単位でみれば何のことはない、ただ現金を本店から支店に移しかえただけであり、あえて仕訳をするなら貸方も借方も「現金 100」ということになってしまいます。
しかし、本支店会計の問題では、間に「本店」「支店」の勘定を入れてやることによって、本店でも支店でも、現金100円の移動に関する仕訳ができることになります。
これと同様に本店からの仕入や支店への売上などについてもただの商品の倉庫を移動しただけであるにもかかわらず、そこに売買取引があったような感じにできます。
で、「本店」や「支店向売上」などの勘定は、ただ本支店間の取引の間に挟みこんでいるだけですので、最終的に「本店勘定と支店勘定」、「本店仕入と支店向売上」はそれぞれ合致することになります。しかし、簿記の問題ではどうも合っていないことが多く、その場合には「未達取引」の処理が残っていることになります。
未達取引の仕訳をする
本支店会計の問題を見ていると、この「未達取引」の処理から始まるパターンが多いようです。未達取引は、本店または支店の一方では処理済であるにもかかわらず、もう一方に未達であったため、そちらでは処理をしていないような取引のことです。
この未達取引がある場合には、本来合致するはずの「本店・支店」「本店仕入・支店向売上」が合致しておらず、処理ができていない方の一方についてこの取引の処理をすることで本支店間の取引高を合わせ、次の処理に向かうことになります。
未達取引の処理についても簡単な例で確認しておきましょう。
例)本店は支店に商品100円を送付したが、支店に未達であった。
本店の仕訳
処理済のため仕訳なし 支店の仕訳
本店仕入 100 本 店 100
本店側ではすでに処理済であるため仕訳をする必要はありません、逆に支店側には商品を送付したことが伝わっていなかったため未処理となっています。
この未処理となっていた取引の処理をすると、本店と支店の取引が一致することになります。
本店と支店で個別に出した損益を合算する
本店と支店でそれぞれ未達となっていた取引の処理をしたら、今度は個別に決算整理をして財務諸表を作成します。このときの処理は普通の簿記上の取引と一緒になるかと思います。
ただし、支店での処理で「本店仕入」については普通の仕入に振り替えてやる必要があることに注意が必要です。
で、他の論点で出題されるの簿記の問題であればここまでやって決算が終了するわけですが、本支店会計の問題ではここから「内部利益の除去」をして「合併財務諸表」を作成しなくてはなりません。
内部利益を除去し、本支店合併財務諸表を作る
最後に、本店と支店のそれぞれで作成した財務諸表を併せた「本支店合併財務諸表」を作成していきます。このとき、本店から支店または支店から本店に送付した商品などが、全部外部に売れたりしてなくなっているのであれば特に問題なく済ませられますが、問題となるのは「本支店間で利益をのせて移転した商品が期末に残っていた場合」ということになります。
なぜならば、例えば本店が100円で仕入れた商品を利益を乗せて110円で支店に送付した場合、本店からすると10円の利益が出ています。しかし支店がこの商品を外部に販売できず、期末までその倉庫に残していた場合には、本店から支店に送付した際に乗せた10円の利益は、企業単位でみれば実現できていないことになります。
なので、そういった場合には当該10円の利益を「内部利益」として控除してやらないとなりません。このときの仕訳は↓
繰延内部利益戻出 ○○ 繰延内部利益 ○○
ということになります。また、当然前期に控除した内部利益を戻してやることもしなくてはなりません。で、その仕訳は↓
繰延内部利益 ×× 繰延内部利益戻入 ××
ということになります。あとはこの繰延内部利益の出し入れ分を含めて本店側で「総合損益」を計算し、支店側の純利益と併せて総合損益を計算してやることになります。
これで、本支店会計の基本的な処理については完了ということになります。
まとめ
簿記の試験で出題される論点のなかでも結構面倒なプロセスが多く、厄介な本支店会計ですが、今回はそれについて本当に基本的な部分についてのみ確認しました。本試験(本支店会計は日商簿記2級以上のレベルで出題されるようです)ではもう少し突っ込んだ問題が出てくるんじゃないかと思います。
今後、この間まとめた「在外支店」以外にも複雑でわかりにくい問題に遭遇した際には、またここで記事としてまとめていきたいと思います。