相続税・贈与税 相続時精算課税に潜む恐怖

ここんとこ一週間ほど、
ずっとFP試験対策についてばかりやってきました。
しかし、相続税・贈与税についてもちょっとは勉強しないとなりません。

で、何を題材にすべきか迷ったんですが、
とりあえず一回の記事で完結できそうな
「相続時精算課税制度」とその問題点について記載していこうと思います。

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Contents

相続時精算課税制度の適用範囲

この相続時精算課税制度は、任意適用の制度で、
その適用の要件は原則として、

  • 贈与を受けた者が贈与をした者の直系卑属である推定相続人であること
  • 贈与を受けた者がその年1月1日において20歳以上であること
  • 贈与をした者がその年1月1日において60歳以上であること

となっています。
また、特例として「その年1月1日に20歳以上の孫」に対しての贈与についても
この制度が準用されるとのことです。

これ以外にも住宅取得資金の贈与を受けた場合についての特例もあります

ただし、贈与を受けた年の途中で養子になった場合など、
適用除外とされるパターンもあるため注意が必要となります。

というような感じです。
これは直系尊属から贈与を受けた場合に希望すれば結構な確率で適用を受けることができると考えていいんじゃないでしょうか。

しかし、「選択適用」の制度であるため、
こっちのほうが有利そうだなと思った場合でも
黙っていては適用を受けることができません。
ちゃんとした届出が必要になります。

相続時精算課税を選択する旨の届出

相続時精算課税制度の適用を受けようとする者は、
贈与税の申告書の提出期限内に以下の届出を行わないといけません。↓

相続時精算課税選択届出書 国税庁HPより

ちなみに届出先は「納税地の所轄税務署長」となっています。

この届出書さえ出しちゃえばOK!みたいな感じですが、
じつはこれ、あんまり気軽に出していいものではありません・・・

なんとこの「相続時精算課税選択届出書」は、
一度提出すると撤回することができないことになっています。

つまり、一度相続時精算課税制度の適用を受けた場合、
その直系親族からの贈与については通常の暦年課税に戻すことができない。
ということになります。

「ちょっと試しに届出してみた♪」みたいなことをせず、
真剣に吟味して、本当に特になると判断した場合にのみ届け出る必要があります。

では、この届出書を提出して制度の適用を受けた場合、
どんな感じで相続税・贈与税の計算が行われることになるんでしょうか。

相続時精算課税制度の税額計算

相続時精算課税制度の適用を受けた場合、
通常の暦年課税とはまったく異なる税額の計算が行われることになります。

具体的には、贈与税が発生するはずであった部分の一定額について、
相続が発生する時まで課税を繰り延べる処理が行われます。

では、それぞれの時における処理について見ていきましょう。

贈与を受けた時(贈与税額の計算)

相続時精算課税制度を適用している場合に、贈与者から財産を貰ったときは、
その贈与者ごとに以下の「特別控除」を受けることができます。

特別控除額は、

  • 2,500万円(すでにこの規定の適用を受けた分を控除した残り)
  • 特定贈与者ごとの贈与税の課税価格

のうち、いずれか低いほうの金額となります。

このとき、特別控除額を超える部分の金額については、
一律20%が課税されることになります。

ここ(贈与を受けた時)では最大2,500万円という結構な金額について課税の繰り延べが行われるということですね。
そんなに資金が要らない高齢世代から、何かとご入用な現役世代に対してスムーズな資産の移転を行うという観点からするとよくできた制度なんじゃないかと思います。

で、もちろんこれで終わりではありません。
このままだと2,500万円分が永遠に課税されないことになってしまいますので・・・
ここで贈与を受けた分は相続が発生した時に”精算”されます。

相続が発生した時(相続税額の計算)

相続時精算課税制度により贈与を受けた財産については、
相続が発生した時に相続税の課税価格に追加算入されます。

このとき、贈与時に2,500万円を超えていたとしてすでに課税されていた金額がある場合、
その贈与税額に該当する部分は相続税額から控除されることになります。

これで「贈与時における課税の繰り延べ」⇒「相続時における精算」
という一連の流れは終わりになります。

実は意外と役に立たない、さりげない恐怖も・・・

相続時精算課税制度を適用すれば特別控除も受けられるし、
土地や建物なんかを一気に贈与したい場合にはお得な制度かも!
というふうになってしまいそうな感じの内容ですが、
実際にはどうなんでしょう・・・

いくら課税の繰り延べが行われるとはいえ、
結局相続税の課税価格に算入されてしまうことになります。

当然「この制度の適用込みで相続税の基礎控除以下になる」
という確証があればいけるのかもしれませんが、
現在の基礎控除額は「3,000万円+600万円×法定相続人の数」に引き下げられており、
2,500万円もの贈与財産があったら引っかかる可能性は高いような気がします・・・

さらに、この贈与された財産について、
相続時に価値が大幅に下落している場合は悲惨です
なぜならば、相続時精算課税の適用財産については、
「贈与時の価額」が相続税の課税価格に算入されることになるためです。

何らかの要因によって贈与された時よりも価値が低くなってしまったものについて、
価値が高かった頃の金額で相続税の課税対象にされてしまうということです。
凄い嫌ですよね・・・

というわけで、この制度については本当に得になることを確認したうえで候補に入れないと
大変ヤバいことになりかねないため注意が必要でしょう。

最後に

相続時精算課税制度についてざっくり記載してきましたが、
この制度、いいように見えて実は・・・みたいなところが多いように思えます。
※細かいとこだともっとデメリットもある

結局、普通に暦年課税でやっていくほうが安定なんじゃないでしょうか。
ただ、どっちがいいかについては贈与を受ける資産など存在しない僕にとっては一切関係のないことなのであんまり考えないことにして、試験対策についてのみ考えていこうと思います。

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