簿記試験対策 「簿記一巡」の手続きについて

そろそろ年度の変わり目が近づいてきました。多くの企業では、3月31日を決算日としており、4月1日からは新年度を迎えることになるでしょう。で、これに関しては簿記の試験で出題される場合もそうなっている傾向にあり、問題文上で「会計期間:4月1日~3月31日」という記載があることが多いかと思います。

今回はそんなタイミングでもあり、ちょうどいい機会だとと考え、「簿記一巡の手続き」について確認していくことにします。正直基本中の基本ではあるんですが、もしかしたら「これから簿記の勉強を始めよう」とか、「日商簿記3級の受験に向けて勉強中」という方も閲覧しているかもしれません、また、基本であるがゆえ、「おろそかにならないようにする」という意図もあります。とにかく、順に見ていきましょう。

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開始手続:開始仕訳と再振替仕訳

簿記ではまず、会計期間の初めに「開始仕訳」を行うことからスタートします。これは開始手続の一環として行われ、資産や負債などの期首における残高を、元帳に記帳する処理をします。こうすることで、昨年度の残高を引き継いで新しい年度の営業を始めることができるようになります。

開始手続の処理として、次に行われるのは「再振替仕訳」です。これは前期末の「経過勘定項目」即ち「前払・未払の費用」、「前受・未収の収益」として期末に残されていたものを、そのまま逆仕訳することによって消滅させます。

 例)第1期に営業費100円を見越計上した。

第1期の仕訳

営業費  100未払費用 100

第2期の仕訳(再振替仕訳)

未払費用 100営業費  100

ただ、上記の例のような「再振替仕訳」が行われると、費用や収益の項目が期首を迎えた直後、ほんの一瞬だけマイナスになってしまうのはどうかとも思います。ただ、これに関しては実際の支払があった際に自然と埋もれていくため、気持ち悪いですが気にする必要はないということです。

これで「開始手続」は終わりです。この後は期中の取引に移っていきます。

営業手続と決算整理前残高試算表の作成

さて、期首の処理を無事に終えたら、今度は期中の取引について記帳していくことになります。

期中の取引については、その発生の都度、仕訳帳などに記帳し、さらにその取引の金額や日付、仕訳時の相手勘定について「総勘定元帳」に転記しなくてはなりません。絶対です、サボってはいけないことになっています。

ただ、最近ではこのあたりの処理については会計ソフトが全部自動で勝手にやってくれるため、人間がいちいちやる必要はなくなりました。確かに便利になったとは思いますが、そのおかげで「経理担当」の人がこの処理について一切知らないまま、淡々とソフトに入力するだけ…みたいなことになっているという話も聞きます。このまま機械化が進んで行った場合、「簿記の手続」などというものは”機械しか知らない古の知識”などということになりかねません。誰でも良いから覚えておくべきでしょう。

で、期中の取引についてひと通り処理を終えると、「決算整理残高試算表」を作成することができます。この後「決算」を行っていくわけですが、簿記の試験で出題される問題では、このタイミングをスタートとして、決算を終えるまでの流れを問うてくることが多いようです。とはいえ、「3月分の取引だけ未処理」みたいな問題が出てこないとも限りませんので、油断しない方が良いでしょう。

決算手続:決算整理と決算整理後残高試算表の作成

次に決算の手続について確認していきます。で、いくつかのプロセスがある決算手続のうち、最初に出てくるのは「決算整理」になります。ここで大切になってくるのは「決算整理事項」、つまり「仕入/繰越商品」・「繰越商品/仕入」みたいな奴等であると思いがちなんですが、その前に「期中取引で未処理だったり、誤って記帳したものについて修正を行う」ことをしなくてはなりません。簿記の問題ではこれについて2,3個ほど処理をしなくてはならないものが多いように思います。必ず最初に処理しておくことを意識するようにしなくてはなりません。

 例)決算整理を行う

決算整理前残高試算表
現金    10諸負債  100
売掛金   90売上高  600
繰越商品 100資本金  100
仕入   500
諸費用  100
800800

期末商品棚卸高:200

※当期中において、売掛金の現金での回収が100円あったが誤って10円で記帳していた。


・期中の誤処理の修正
当社の仕訳

現金  10売掛金 10

正しい仕訳

現金  100売掛金 100

修正仕訳

現金  90売掛金 90

・決算整理仕訳

仕入   100繰越商品 100
繰越商品 200仕入   200

決算整理後残高試算表
現金   100諸負債  100
繰越商品 200売上高  600
仕入   400資本金  100
諸費用  100
800800

こんな感じになります。ちなみにこの段階ではまだ損益や利益の振替仕訳が行われていないため、利益剰余金が変動してくることはありません。この後、各種の振替を行うことによって当期の利益額や、来年度に持ち越す残高が算定されることになります。

決算手続:損益・利益・残高の振替

最後に、「各費用収益の損益への振替⇒当期の利益の繰越利益剰余金への振替⇒残高の振替」という順番で決算手続を終えていくことになります。ちなみにここでも順序が決まっています。間違えたらどうなるのかはわかりませんが、守っておいたほうが無難であることは確実かと思います。

まず、「損益振替」です。これはその期に発生した費用・収益を、それぞれ「損益」という勘定に振替えて集計します。

 例)損益振替

決算整理後残高試算表
現金   100諸負債  100
繰越商品 200売上高  600
仕入   400資本金  100
諸費用  100
800800

・費用項目の損益勘定への振替

損益  500仕入  400
諸費用 100

・収益項目の損益勘定への振替

売上高 600損益  600

損益振替を行うことによって、仕入や各種費用、売上高などは総勘定元帳において貸借が一致し、締め切ってしまうことができます。あとは振替により発生した「損益勘定」を合わせていくことになります。上記の例では、費用項目よりも収益項目の方が100円多かったため、損益勘定は100円の貸方残高となっています。この不一致分を「利益振替」によって、繰越利益剰余金(場合によっては資本金など)に振り替えていくことになります。

例)利益振替

損益
仕入  400売上高 600
諸費用 100
500600

利益振替仕訳

損益     100繰越利益剰余金100

損益
仕入  400売上高   600
諸費用 100
繰越利益剰余金100
600600

これで損益勘定も貸借が一致しました。で、ここでやっと出てきた利益剰余金については、この後「資産・負債・純資産」と一緒に「残高」に振替て翌期に繰り越していくことになります。

ちなみに、最後の「残高振替仕訳」についても損益振替仕訳と同様に行っていき、ちゃんと貸借が一致すれば決算手続は完了となります。

なお、これとは別に「清算表」を作ることになりますし、それについては日商簿記の問題などでは頻繁に出題されているようです。ただ、これについて書いているとまた長くなってしまうので、次回以降に別の記事でやって行こうと思います。

※できたらここにリンクを貼っておきます。

まとめ

多くの企業が決算を迎える3月31日が近い、ということで「簿記一巡」について確認してきました。正直、面倒な手順があってイヤになるところですが、「簿記におけるすべて事柄の基本」と考えると蔑ろにはできませんね。実際には会計ソフトが勝手にやってくれることとはいえ、試験では覚えておかないとならないということもあり、手続の順序などを忘れないようにして注意しておきたいものです。

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