簿記試験対策 繰延資産の処理について

企業会計では、開業時などに一気にかかった費用について「繰延資産」として処理することがあります。それらは「本来費用として処理するもの」ではあるんですが、諸々に事情なんかを考慮した結果、一旦資産として計上し、時間の系課とともに償却していく処理が認められています。

当然、簿記の試験でもそれらについて問われることがあります。ただ、出題された場合の処理や解答手順のボリュームは他のものと比べてずいぶん小さいものであるため、余り印象には残っていません。それでも忘れていたらそれが絡む問題を失点することになってしまうため、ちゃんと解答できるようにしておかなくてはなりません。

と、いうことで今回は「繰延資産」についていろいろと確認していくことにします。

スポンサーリンク

Contents

繰延資産とは

まず、「繰延資産」とはなんなのでしょうか?平成18年8月(平成22年2月改定)の、
「繰延資産の会計処理に関する当面の取扱い」では、次のように述べられています。

将来の特定の期間に影響する特定の費用は、時期以後の期間に配分して処理するため、経過的に繰延資産として、資産の部に計上することができるとされている。

~略~

本実務対応報告では、以下の項目を繰延資産として取り扱っている。
①株式交付費等
②社債発行費等(新株予約券の発行に係る費用を含む)
③創立費
④開業費
⑤開発費

中央経済社 編(2012)「会計法規集」420頁

つまり、何かに係る費用として一時に支払ったものの、その費用の効果が将来にわたって継続していく場合には「繰延資産」として計上することができ、そのようにできる費目が上で列挙されている5つ、ということなんですね。

ちなみに、繰延資産として計上するかどうかは「任意」となっているため、普通に費用として処理しても構わないようです。というかそっちが原則のはずです。

繰延資産として計上するための要件

では、ここでもうすこし「繰延資産の考え方」について触れておきます。繰延資産として処理できるのは上記5費目ということになっていましたが、どのような理由でそれらが該当することになるのでしょうか?

これについて「当面の取扱い」では、

繰延資産の考え方については、企業会計原則注解に示されている考え方( )を踏襲する。

( )内:すでに対価の支払が完了し又は支払義務が確定し、これに対応する
役務の提供を受けたにもかかわらず、その効果が将来にわたって発
現するものと期待される費用

中央経済社 編(2012)「会計法規集」420頁

とのことです。これに当てはまるのがあの5つになった、ということなんですね。簿記の試験対策上は特に覚える必要がなさそうですが、財務諸表論なんかで出題されると厄介なので、一応確認しておきます。

繰延資産の処理

さて、ここからやっと本題に入ります。、まず、簿記の試験問題で問題文や資料にに繰延資産がある場合、当然それを償却していくことになりますが、大変残念なことに「会社法に基づく最大の年数で償却する」とかなっていることが多いです。

つまり、5つの繰延資産がそれぞれ最大何年で償却できるかについて覚えておかなくてはなりません。とりあえず表にまとめておきました↓

繰延資産の種類最大償却年数
開業費5年
創立費5年
開発費5年
株式交付費3年
社債発行費
(新株予約権含)
社債の償還までの期間
(新株予約権発行費は3年)

ざっと見たところ、5年と3年に分かれており、社債発行費だけなんか特殊な感じです。とりあえず「開業・創立・開発」は5年、「株」は3年と覚えておけばよさそうですね。なお、社債発行費については利息法での処理も認められているようです。社債の処理に混ぜていく感じでしょうか?どっかで見たことあるような気がしますが、忘れました。

一応、社債の処理に関しては以下の記事から↓(あまり関係ありません)
簿記試験対策 社債の処理と買入償還

で、ここまでわかってしまえば後は普通に償却していくだけです。繰延資産を償却する場合には、固定資産のように「累計額」とはせず、直接帳簿価額から控除していくことになります。

たとえば、

開業費を償却する場合
開業費償却 ○○開 業 費 ○○

みたいな感じです、ただし、これだけだと簡単すぎるためか、実際の問題ではすでに何年か償却してあって、もともとの金額を推算させたうえで当期の償却額を求めなくてはならないものが多いように思えます。こういうのを指折り数えていくと結構時間食うんですよね…面倒だし数え間違いとかも発生するとイヤなので、できれば「当期首に支出した」とかで出題していただきたいです。

まとめ

繰延資産に関しては特に厄介なところもないため、どれを何年で償却するのかということをしっかり覚えておくのと、途中まで償却してあった場合に、もとの金額をすばやく推算する、ということを意識しておけば何とかなるんじゃないかと思います。おそらくここがウザいのは財務諸表論の理論問題になるかと思いますので、そっちをしっかりやっておくようにします。

スポンサーリンク