宅建試験の「権利関係」の範囲の中で出題される論点のうち、いくつかのものについては過去に勉強したFP2級の不動産の範囲では出題されないもの、つまり”宅建の試験をじゅけんするにあたり初めて勉強する論点”となっています。
で、そのうちのひとつに「抵当権」の設定とその担保についてのものがあります。普段、ローンを組むことなどはあるにしても、何かを担保にして借金をした、という経験は今のところありません。もちろん、そのような担保にできる資産も保有していません。
つまり、この「抵当権」については、”宅建試験のためだけに”勉強することになってしまいます。となると当然のことながら「状況をイメージして…」とかいうような覚え方はできず、テキスト等の内容を必死で暗記していく他ないように思えます。
そこで、今回は宅建試験で出題される「抵当権」に関する論点について、何とか覚えることができるようにまとめていこうと思います。
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そもそも「抵当権」とは?
まず、そもそも「抵当権」とはどんなものなのかを確認しておきたいと思います。
他人に対して債権がある場合には、その回収をより確実なものとするために何かしらの担保を設定してもらうことが考えられますが、この担保するための権利が「担保物権」ということになってくるそうです。
で、この担保物権には「法的担保物権」と「約定的担保物権」があるとのことで、抵当権はこのうちの約定的担保物権に該当するものであるそうです。よくわかりませんね…
では、不動産などを担保として設定してもらった場合にはどのような効果があるのでしょうか?民法の規定から抜粋しておきます↓
民法第三百六十九条 抵当権の内容
抵当権者は、債務者又は第三者が占有を移転しないで債務の担保に供した不動産について、他の債権者に先立って自己の債権の弁済を受ける権利を有する。
参考:e-gov法令検索
つまり、抵当権が設定されていれば、そうでない債権者に比べて優先して債権を回収することができる、ということになっているようです。
別に抵当権を設定してあるからといって権利者は何かが手に入るわけではありませんし、抵当権の設定者(債務者)側も何かを引き渡さなくてはならないというわけではないですが、それゆえ、「割りと気軽に設定しやすい」担保、ということになるんじゃないでしょうか?
抵当権の性質と設定可能なもの
次に、抵当権の持つ性質と、抵当権を設定可能な財産について確認していきます。
抵当権の持つ4つの性質
抵当権には、以下4つの性質があるとのことでした。
- 付従性
⇒抵当権は必ず債権とともに設定される、逆に債権が無ければ存在し得ない - 随伴性
⇒被担保債権とともに譲渡される - 不可分性
⇒債権の一部が弁済されたとしても、抵当権の割合が減少することは無い - 物上代位性
⇒目的物の売却などで得た金銭等にも効力が及ぶ
4つとも一見難しそうな表現となっていますが、言わんとしていることはそこまで難しいことではないような気がします。
これについてはテキストでもわりとページを割いて説明がなされていたため、宅建試験の本試験でも出題されることがあるかもしれません。
設定可能な財産
抵当権を設定することができる財産は、土地や建物などの不動産に限らず「地上権」と「永小作権」にも設定することが可能になっているとのことです。意外と引っ掛けられそうな感じですので注意しておく必要がありそうですね。
なお、「地上権」に抵当権を設定した場合については、民法の条文で以下のようなものを見つけましたので、参考までに抜粋しておきます↓
第三百九十八条 抵当権の目的である地上権等の放棄地上権又は永小作権を抵当権の目的とした地上権者又は永小作人は、その権利を放棄しても、これをもって抵当権者に対抗することができない。
参考:e-gov法令検索
上記は「持っていた地上権に対して抵当権を設定したにもかかわらず、勝手にその権利を放棄するのはよくない」的なことが言いたいんでしょうが、その放棄自体は有効なのか?そういって所がよくわかりませんね…
とりあえず条文を読んでいて気になったため確認しておきましたが、宅建試験でここまで突っ込んで出題されることはあるのでしょうか?無いと願いたいものですが。
抵当権はどこまでの範囲に効力が及ぶのか?
続いて、抵当権を設定してある場合、その権利の効果はどこまでに及ぶのかについてです。
まず、抵当権が保証する債権は、自分(権利者)以外にも抵当権設定者や債権者がいる場合には「元本+最後の2年分の利息」、他に債権者がいない場合には「元本+利息の全部」とのことで、抵当権を行使した場合には上記について優先して弁済を受けることができる、ということになります。
では、抵当権はどこまでのものに対してその効力を発揮するのでしょうか?
例えば、自分で所有する土地の上に建物を建てて居住していた場合、その土地に抵当権を設定した場合にはどのような扱いになるのか?といったようなことです。
で、これについては「土地ならば土地のみ」「建物ならば建物のみ」というように、土地⇔建物間ではその効力が及ぶことはないようです(FP・金融機関職員のための宅建合格テキストより)。
しかしながら、抵当権の効果は「それ自体」だけでなく、以下の2つのものにも及ぶということでした↓
- 付加一体物(民法第三百七十条)
これはその不動産と一体となって機能しているものを示すものであるとのことですが、テキストでは「天井、床、階段」や「樹木、石垣」などが例として挙げられていました。イメージとしては「建物付属設備」のようなものでしょうか? - 従たる権利
建物に抵当権が設定された場合にはその建物を利用するための「敷地の権利」についても抵当権の効力が及ぶとのこと、建物を競売で取得してもその建っている敷地に設定されている借地権を利用できなくては建物自体の利用ができませんから、それは当然のように思えます。
なお、抵当権はその目的物から生じた果実(利益)についてはその効力が及ばないことになっていますが、民法の規定ではその例外として以下のような記載がありました↓
第三百七十一条
抵当権は、その担保する債権について不履行があったときは、その後に生じた抵当不動産の果実に及ぶ。
参考:e-gov法令検索
つまり、宅建試験の本試験において抵当権に関しての出題があったときに「債務の不履行により…」とかそういった類の表現があれば、「その果実部分まで抵当権が及ぶんだな~」と考えておけばよいということでしょう。
まとめ
今回は宅建試験で出題される「抵当権」の基本的な部分について確認しました。
抵当権に関しては、上記以外にも「賃借人その他第三者との関係」や「根抵当権」などについての出題もあるようなので、時間があればこれらについても引き続き確認していきたいと思います。