簿記試験対策「ソフトウェアの処理②」市場販売目的のソフトウェア

前回の記事からソフトウェアの3種類の項目をひとつづつ確認していくことにしました。2回目となる今回は「市場販売目的のソフトウェア」についてです。

※自社利用のソフトウェアについては以下の記事から↓
簿記試験対策「ソフトウェアの処理①」自社利用のソフトウェア

受注制作のソフトウェアについては以下↓
簿記試験対策「ソフトウェアの処理③」受注制作のソフトウェア

企業は様々な目的でソフトウェアを使用しますが、会計処理はその「製作目的」ごとに分けて行うことになっています。今回の「市場販売目的」は、ソフトウェアを顧客に販売するために製作されたもので、まず「製品マスター」なるものを作成、それをコピーして販売することになります。

で、それを顧客に販売できる状態にするまでに、いくつかのステップを踏んで完成に近づけていくことになり、その段階ごとに処理が異なってきます。これらを、順を追って確認していきます。

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製品マスター完成までの費用

市場販売目的のソフトウェアを製作する場合、まずは複製の元となる「製品マスター」の完成を目指すことになります。このときまでに要した費用は「研究開発費」として費用処理することになります。

この根拠として「研究開発費等に係る会計基準の設定に関する意見書」(以下、意見書とする)では、

製品マスターの完成は、工業製品の研究開発における量産品の設計完了に相当するものであると考えられるためである。
注:中央経済社 編(2012)「会計法規集」62頁

ということを述べています。

よって、簿記の問題で市場販売目的のソフトウェアの製作に関する一連の処理が出題された場合には、この部分を切り出して「研究開発費」にしておかなくてはなりません。

設例

 当社は市場販売目的のソフトウェアを作成した。このソフトウェアの製品マスターの製作費用は10,000円であった。
 仕訳
研究開発費 10,000 / 現金預金等 10,000
(↑当期の費用として処理)

製品マスターの改良・機能維持

製品マスターが完成したら、複製して販売する前?に、その改良や強化、機能の維持などの作業を行うことになります。ぶっちゃけその辺の作業についてはソフトウェアの製作に携わったことがないので、「何をするのか」とか「販売の前後どのタイミングで設計の見直しをするのか」などといったことは全くわかりませんが、簿記・会計上ではこのあたりの処理は3種類に分かれ、それぞれ処理方法が異なってきます。

では、3種類の処理をそれぞれ確認していきましょう。

製品マスターの著しい改良

まず、製品マスターに対して「著しい改良」を行った場合ですが、これについてはその完成までの費用と同じく「研究開発費」として費用処理することになります。マスター自体が著しく改良されているということは、そこにかかった費用は、まだ完成する前の費用という扱いになるんでしょう。この「著しい改良」が終わって初めて、製品マスターが完成したといえる状態になるんですね。

設例

 一度完成した製品マスターに対し、著しい改良を行った。当該改良にかかった費用は5,000円であった。
 仕訳
研究開発費 5,000 / 現金預金等 5,000

機能の改良、強化

次に、「著しく”ない”」機能の改良、強化を行った場合です。この場合の処理について「意見書」では、

製品マスター又は購入したソフトウェアの機能の改良・強化を行う制作活動のための費用は、著しい改良と認められない限り、資産に計上しなければならない。
注:前掲62頁

つまりこの「機能の改良、強化」に要した費用は、資産として処理することになるということですね。で、そのときに用いるのが「ソフトウェア(無形固定資産)」ということになります。ここまできてようやくソフトウェアが帳簿に計上されました。

機能の維持

最後に、製品マスターの機能維持に要した費用です。機能維持って何のことなのかはよくわかりませんが、テキストとか問題集の解説欄とかによく「機能維持」として記載されているのが「バグ取りなど」になります。結局何をするのか不明なんですが、とりあえず簿記の試験で「バグ取りに要した費用」的なことが出てきたら、機能維持なんだな~ぐらいに思っておくことにします。

で、ここでの出費は製品マスターに著しい改良を加えるわけでもなく、機能を強化するわけでもない「単なる維持費」にすぎないものです。よって「機能維持」に要した費用は、営業費などとして「費用処理」することになります。

設例

 製品マスターのバグ取りにかかった費用は5,000円であった。
 仕訳
営業費等 5,000 / 現金預金等 5,000

製品を作り出す前までのまとめ

ここまできたところで、やっと製品マスターからソフトウェアを複製して販売することができるようになります。ここで一旦、これまでの流れを全部まとめた設例を確認しておきます。

設例

 当社は、市場販売を目的としてソフトウェアを作成した。
・製品マスターの製作費用:10,000円
・製品マスターに対する著しい改良:5,000円
・製品マスターの機能の改良、強化:20,000円
・バグ取りなどの機能維持:5,000円
 仕訳
研究開発費  15,000 / 現金預金等 40,000
ソフトウェア 20,000 /
営業費等     5,000 /
※研究開発費:マスター作成10,000円+著しい改良5,000円=15,000円

正直、上記の例のようなはっきりした言い回しで示されていれば、それぞれの処理を覚えていさえすれば簡単だと思います。しかし、実際の試験ではどんな感じにひねったりひっかけてくるかわからないので、なるべく多くの練習問題を解いて慣れていくしかないかもしれません・・・

ちなみに、この後製品マスターを複製して製品を製造するのにかかった諸々の費用については、「製造原価」として処理するとのことでした。

減価償却の方法

さて、著しく”ない”製品マスターの機能の改良、強化に要した費用については「無形固定資産」として資産計上されています。ということになると、この部分を減価償却してやる必要がでてきますね。

で、このときの償却の基準として用いられるのが「見込販売数量」になります。また、「見込販売収益」に基づく償却も認められているとのことです。ただし、どちらの場合であっても、「残存有効期間」に基づく均等配分、つまり当期首におけるソフトウェアの未償却残高を残存有効期間で割ったもの、と比較して、大きい方を償却額として選択しなくてはなりません。

なお、「残存有効期間」は、簿記の試験では通常3年となっていることが多いようです。

 償却額の計算

①未償却残高×実績販売数量・収益/見込み販売数量・収益
②未償却残高/残存有効期間

①と②のいずれか大きい方を償却額とする。

で、この償却額については「販売したソフトウェアの分」に対応することになるため、「売上原価」として処理することになります。実際に設例で確認してみます。

設例

 当期首に完成し、資産計上した市場販売目的のソフトウェア3,000円について、見込み販売数量に基づいて償却を行う。
なお、販売は当期首より開始し、販売数量は見込みどおりであった。

見込み販売数量
当  期1,500個
第2期500個
第3期1,000個
 当期の償却額
①帳簿3,000円×当期1,500個/見込3,000個=1,500円
②帳簿3,000円/残存有効期間3年=1,000円
①>② ∴1,500円
仕訳
売上原価 1,500 / ソフトウェア1,500第2期の償却額
①帳簿1,500円×当期500個/見込1,500個=500円
②帳簿1,500円/残存有効期間2年=750円
②>① ∴750円
仕訳
売上原価 750 / ソフトウェア 750

第3期の償却額
帳簿残高750円←全額償却
仕訳
売上原価 750 / ソフトウェア 750

と、このようになります。注意すべきは償却額が「売上原価」となることと、必ず残存有効期間に基づく償却額と比較することでしょう。問題を見ていると、どっちが償却額として採用されるのか結構微妙な奴がよくあります。

また、今回の設例ではめんどくさいので記載していませんでしたが、「見込販売収益」がある場合、時期以降のそれが当期末の未償却残高を下回ってしまった場合、その差額分を償却額に含めてやる必要があるので注意しておく必要があります。

まとめ

今回は「市場販売目的のソフトウェア」についてでした。ソフトウェアの製作目的はまだあとひとつ、「受注製作」が残っています。これも今回と同列に面倒な奴なので、次回以降また確認していこうと思います。

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